通わせると「子だくさん」になる奇跡の保育園が熊本に 3人4人は当たり前…秘密は“親の成長”にあった
親としての成長
本書ではその秘訣を、やまなみこども園のカルチャーとして8項目に分け、詳しく紹介している。中でも親からの支持が高いのが「親が親として成長できる環境が整っている」ことだ。
道枝はこう語っていた。
「社会でどれだけ活躍しているハイ・キャリアの人であっても、最初は親としては素人なんです。人は子どもを産んだからといって、いきなり親になれるわけではありません。社会のキャリアとは別に、親が親として成長して初めて一人前の親になるのです。
ところが今は、大人が親として育つ前に、園に子どもを丸投げすることが増えてきています。これでは、プライベートで子どもと接している時にストレスを感じるのは当たり前です。
親が子育てに感動し、もう一人育てたいと思うには、社会人のキャリアとは別に、親として成長することが不可欠なのです」
たとえば、それまで仕事一徹できた経営者が、いきなり「赤ちゃんに離乳食を食べさせてくれ」と言われても、「つらく面倒な作業」としか受け取れないかもしれない。この経営者にとっては仕事がすべてなので、その行為を「仕事の邪魔になる行為」としか感じられないからだ。
一方、同じ経営者であっても、親として成長している人なら、それをスムーズに受け入れられる。経営者目線でなく、親目線で離乳食を見て、「もうこんなものを食べられるようになったんだ」と感心したり、声をかけて返ってくる反応に喜んだりできるからだ。
後者の人は経営者としての自分とは別に、親としての自分を作り上げている。だから、切り替えて、それはそれとして楽しめる。
あえてわかりやすく極端な例で説明したが、これは「寝かせつけ」「園の送り迎え」「沐浴」など、子育てにかんするあらゆることに当てはまるという。
子どもを預かるだけでなく…
どうすれば、大人は社会人としての自分だけでなく、親として成長することができるのか。
道枝の言葉を紹介したい。
「昔は子どもの頃から小さなきょうだいや親戚の世話をしたり、親や祖父母から教わったりしながら、自然に親となっていきました。親が親になる環境が当たり前のようにあったのです。
でも、今はそうした環境が失われています。大人が社会人としてキャリアをつめる環境はあっても、親として成長する環境がないのです。
だからこそ、私は保育園がその環境を用意することが必要だと思っています。単純に子どもを預かるだけでなく、親が親として成長できる機会をたくさん用意し、親として成長してもらうのです。それが園、親、子どもの三者が幸せになる方法だと思っています」
親として成長する環境がなければ、大人は子育てにストレスしか感じず、保育士など専門家に任せるだけになる。園の側は、少子化なので親の要望に応えなければ園児が増えずに経営が成り立たないので、親の機嫌をうかがって、あれもこれもと言いなりになって受け入れていく。
現在、多くの保育園の負担となっているのが、まさにこれだ。不要なほどの徹底的な管理、三食の提供、手ぶら保育、親用のカフェの設置……。これに追われて疲弊するのは現場の保育士だ。
一方、やまなみこども園が行っているのは、親の不安を無条件で引き受けるのではなく、親としての成長を促すことで不安を幸福へ変える実践だ。
細かな実践については、本書を参考にしていただきたいが、日常の保育から大きな行事まで、親が親として成長できる機会をたくさん用意しているため、気がつけば親の方が子育てをすることに生きがいを見出すようになっているのである。
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