「船に重大な故障が発生し……」 「辺野古・転覆事故」船長(71)が語っていた「船体の老朽化」と「航行の危険」

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仲間が転覆した経験も

 船長の金井氏は1954年、北海道岩内町生まれ。早稲田大学政経学部、東京神学大学大学院を経て、日本キリスト教団富士見町教会副牧師、明治学院大学牧師などを務めた。2006年、日本キリスト教団佐敷教会牧師となり、沖縄へ。海上での反対行動に携わるようになった。2014年に「不屈」が就航してからは船長を務めている。

 大変変わった経歴だが、根っからの海人ではない。その金井氏は生前、『沖縄・辺野古の抗議船「不屈」からの便り』(2019年)とその続編(2025年)の、2冊の著書を刊行している。その中では、辺野古の海の危険性を繰り返し述べていた。

 同書によれば、辺野古の海は「ここで一カ月(船長を)やったらほかの海で一年やったのと同じ」と呼ばれるほど難しく、座礁の恐れのある個所もあちこちに隠れているという。

 沖縄の3~4月は海がしばしば荒れる。旧暦2月には「ニングヮチ・カジマーイ」と呼ばれる、穏やかな南風が急に強烈な北風に変わる現象が起きるという。地元の漁師でも最大の恐怖と震え上がるほどだそうだ。

 実際、金井氏の仲間はボートで転覆した経験もあるといい、

〈行動を終えて辺野古に帰るときにこの海況は追い風で、かつ追い波になります。あっという間に転覆して船長二人は海に投げ出されてしまいました。本当に海は命の危険と隣り合わせです。事故は必ず起こるものと心して、気を引き締めていかなければなりません。〉(前掲書続編)

船長の責任は重い

 金井氏は同書でこうした危険性を記した上で、繰り返し述べている。

〈どんなに慣れていても海はその時々で全く様相が違うことがあります。〉

〈海では簡単に人が死にます。ですから船に同乗している人たちの命を預かる船長の責任は重いのです。〉

〈自分の命も、仲間の命も最大限大事にしながら、海では人は簡単に死ぬことを肝に銘じて、無事に帰ってくることを第一にこれからも活動していきたいと思います。〉

〈私たちの行動は命を守るためのものです。自分たちの命も本当に大切にし、安全には最大限、気をつけてこののちも基地建設を食い止める行動をしていきたいと思います。〉

 これほどまでに海の恐ろしさを認識していたのに、しかも、抗議活動とは関係のない生徒を多数載せていたのもかかわらず、なぜこの日、金井氏は出航の決断を下したのだろうか。高校によれば、教員が当日、打ち合わせした際に金井氏は、注意報への言及はなく、出航に疑念も呈さなかったという。当人が亡き今、その判断の謎は解けることはないが、遺族は恨んでも恨みきれないであろう。

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