理想の歯磨き時間は? 専門家が教える「本当の歯磨き術」 血が出ても大丈夫な理由とは

ドクター新潮 ライフ

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 歯を磨かない人はいない。そして、それが健康長寿にとっていかに大事かを理解しない者もいない。だが同時に、多くの人はまだ知らないはずだ。「本当の歯磨き」を――。歯ブラシの持ち方から適切な時間まで、高齢期の天国と地獄を分ける歯磨き術を訪問歯科医師の伊東材祐(さいゆう)氏が指南。

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 あなたは、自宅を掃除する時はしっかりと目を開けていますか、それとも閉じていますか?

 冒頭から妙な質問ですが、当然のことながら、答えは「開けている」でしょう。そもそも目を閉じては、動きにくいことこの上ないですし、どこまで部屋の中が奇麗になったかも分かりません。

 では、歯磨きをする時はどうでしょうか。やはり、目を開けて磨いていると思います。しかし、歯科医の立場から言えば、実は、多くの人は“目を閉じたまま”磨いているのに等しい。なぜなら、本当の意味で歯がどこまで磨けたかを確認しながら磨いているわけではないからです。掃除に例えれば、ちゃんと部屋の四隅まで掃除したかを確かめていないのと一緒。つまり、掃除したつもりになっていても、実際にはあちこちに埃が残っている……。

 このように、目を閉じたまま掃除するのと同じくらい自分の歯磨きは適当で、実は口の中が“散らかり放題”だとしたらゾッとしませんか?

〈こう問いかけるのは、訪問歯科医師の伊東材祐氏だ。

 これまで高齢者施設などで7万回以上の訪問診療を行ってきた伊東氏は、「歯の健康」を失った高齢者を多く目の当たりにしてきた。そして、それが歯にとどまらず「心身全体の健康」をむしばむことにつながる現実にも直面した。すなわち、健康長寿のためにはやはり歯が命である、と。

 豊富な訪問診療体験を基に伊東氏が続ける。〉

歯磨きの真の目的とは

 介護施設で、高齢者の「一番の楽しみは何か?」という問いに対する回答として最も多いのは、テレビ観賞でも、家族との面会でもなく「食事」です。人は、最後まで「食べる喜び」を望むのです。

 しかし現実は厳しい。歯が抜け、ペースト状の柔らかい食事しか味わえず、じめじめした口の中で細菌が増殖して、味を感じる細胞を覆い、おいしさを感じられないのです。

 また、糖尿病、誤嚥性肺炎、脳梗塞、心筋梗塞、うつ、肥満、そしてアルツハイマー型認知症……と、多くの病気・症状と、口腔環境の質が関係していることが医学的に明らかになってきています。文字通り、歯が命であり、口腔内を良い環境に保つ重要性が、人生100年時代のいま改めて問われているのです。

 そんなことは分かっている。だから毎日ちゃんと歯磨きしているのだ――そう反論される方もいることでしょう。実際、歯磨きを全くしない人はまれでしょうし、朝晩に加え、昼も会社で歯磨きをする人が増えています。しかし、残念ながら、「歯磨きの本質」を理解している人は極めて少ないと感じます。

 あなたは、「何のため」に歯磨きをしていますか? 食べかすを取る、虫歯予防、歯が汚れていると恥ずかしいから、口臭をなくすため、はたまた習慣だから……。さまざまだと思いますが、どれも“正しい目的”とはいえません。歯磨きの本質とは「病原細菌の除去」。具体的には、虫歯菌はもちろん、歯周病菌をも取り除くことなのです。

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