理想の歯磨き時間は? 専門家が教える「本当の歯磨き術」 血が出ても大丈夫な理由とは
「本当の歯磨き」とは
歯の健康に関する啓発が進んだこともあってか、例えば高校生が虫歯を有する率は昭和55年度で95.90%であったのに対し、令和6年度では34.70%にまで激減しています。
一方、歯周病は、「人類史上最も感染者数の多い病気」としてギネスブックに認定され、50歳を過ぎると2人に1人は重症化しているとされるほどで、改善されたとは言い難い。歯周病菌は免疫細胞も勝てないほど強力で、プラーク(細菌塊)に入り込み、とりわけ歯と歯茎の間の歯周ポケットで繁殖していきます。しかも虫歯と違い、初期、中期だと、「むず痒い」くらいの自覚症状しかないため、どんどん進行する。歯周病が「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれるゆえんです。
だから、「虫歯がないから私は大丈夫」というのが一番危険なのです。
歯周病が進むと、歯周ポケットがどんどん広がっていき最終的には歯が抜けてしまいます。それだけではなく、ごく簡単に言うと、歯周病とは口腔内で炎症が起きる病気であり、その際に放出される炎症性サイトカインという物質が口腔外にも回って、さまざまな病気を引き起こします。先ほど口腔環境の質と関係があるとして挙げた糖尿病以下の病気は全て、歯周病由来、あるいは歯周病との関連が指摘されています。なお歯周病は、他者からの感染などにより、16歳以降に急激に増える感染症です。
従って、単に食べかすを取ったり、見た目上、歯を奇麗にするのではなく、歯周病菌を含む病原細菌を口腔内から除去することこそが「歯磨きの本質」なのです。この本質を置き去りにした歯磨きは、いわば「子どもの歯磨き」であって、50歳を超えた「中高年の歯磨き」とはいえません。70代、80代、90代になっても、歯周病菌に関係するさまざまな病気の発症リスクを下げ、「食べる喜び=生きる喜び」を味わい続けるためには、子どもの歯磨きから脱する必要があるのです。
1回10分以上が理想的
では、本質を踏まえた歯磨きとは、具体的にはどんなものなのか? そもそも、小学生以来、「歯磨きの仕方」を教わったという人はほとんどおらず、アップデートされていないでしょう。以下、中高年にとって必要な「本当の歯磨き」を解説していきたいと思います。
まずは「時間」について。
あなたの1回の歯磨き時間はどれくらいでしょうか。それこそ、子どもの時に教わった「3分」という人もいるかもしれませんが、私が訪問診療した際に聞くと、最も多いのは「1分」です。人には28本歯があり、歯磨き3分だと1本あたりは6.4秒、1分だと2.1秒しか磨けない。これで歯の「掃除」が満足にできるはずがありません。だから私は、1回10分以上を推奨しています。
実際、80代、90代になっても、まるで30代のように美しく歯の健康を保っている人たちは、1回に20分もの時間をかけて磨いている人も珍しくありません。
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