理想の歯磨き時間は? 専門家が教える「本当の歯磨き術」 血が出ても大丈夫な理由とは

ドクター新潮 ライフ

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天国と地獄の分かれ目

 問題は、歯茎を歯ブラシで磨くと、歯茎を傷つけてしまうことです。けれども、大量の細菌が歯茎に付着している。この超難問を解決してくれるのが、口腔専用の「スポンジブラシ」(薬局の介護用品売り場などで販売)です。

 スポンジなので柔らかく、歯茎を傷つけずに汚れを除去できます。口の奥から手前に、歯茎の上を優しく滑らせ、付着した細菌を除去してください。

 これで「本当の歯磨き」は完了です。

 とはいえ、横磨き、縦磨き、バス法を経て、フロス、歯間ブラシ、スポンジブラシを使い、10分以上も歯磨きするなんて気が遠くなります。無理だと思うのも当然です。そんな時は、「ながら磨き」がお勧めです。雑誌を読みながら、片付けをしながらなど、何かしながら、歯磨きをすることで、これらのグッズを使う時間を確保できます。

 私は、訪問診療の現場で、「先生、ちゃんと歯磨きしてきたのに、なんでこんなにもボロボロになっちゃったんだろうね」という悲しみや嘆きを数え切れないほど聞きました。この天国と地獄の分かれ目は「歯磨きの本質」、すなわち虫歯・歯周病菌を奇麗に除去できたかどうかです。それを確かめる意味で、もう一つだけ実践してほしいことがあります。

細菌を「可視化」

 それは、「歯垢染色剤」です。小学生の歯科検診の際、赤いラムネのようなものをかまされた記憶はありませんか? あの錠剤です。市販の歯垢染色剤を使うと、細菌塊が残っている箇所が赤く染まります。1分しか磨いていない人であれば、間違いなく歯の至る所が赤く染まるはずです。特に、歯周ポケットや歯茎は真っ赤になるでしょう。「本当の歯磨き」を実践しても、初めの頃は必ずどこかが赤く染まります。

 こうして歯垢染色剤の助けを得ることで、初めて私たちは自分の歯についた細菌を「可視化」することができるのです。1カ月に1回でも、3カ月に1回でも構わないので、ぜひ歯垢染色剤を使ってみてください。まるで目を閉じて部屋を掃除していたかのように、いかに自分が“いい加減”に歯磨きをしていたかを実感することでしょう。

 この赤く染まった歯を見るとがくぜんとします。なぜなら、赤く着色した細菌塊1グラムに1000億個以上の細菌が含まれるから。密度では、大便よりも汚い。悪臭の原因になるだけでなく、体に悪いばかりか、心にも良くありません。こんな細菌塊をつけたままでは気持ち悪い。逆に言えば、赤く染めることで、奇麗にせずにはいられないし、目で見ながら、赤く染まった細菌を根こそぎ除去できる実益もあります。これで糖尿病や認知症などさまざまな病気も遠ざけられます。

 歯を大切にする意志、覚悟。それこそが自分の「命」を大事にすることだと私は考えています。

伊東材祐(いとうさいゆう)
訪問歯科医師。大学病院でオーラルリハビリテーションなどの先進医療の研鑽を積み、その後、在宅医療専門の歯科医院を開設。これまでに7万回以上の訪問診療を行ってきた。歯の大切さを広めるため、口腔ケアセミナーの講師なども数多く務め、『おとなの歯磨き』の著書がある。

週刊新潮 2026年2月5日号掲載

特別読物「天国と地獄の分かれ目は…健康のための『歯磨き』新常識」より

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