「太腿を触ると、筋肉がほとんどなく骨の棒のようで…」 要介護にならないための「歩き方」を80代の健康インストラクターが指南

ドクター新潮 ライフ

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ゆで卵をストック

 このように五感や想像力を働かせて、何でも楽しもうとすれば、ウォーキングや散歩は「おまけ」となり、「結果的に歩いていた」ということにできるはずです。楽をしたい私が、この年でも歩くことを続けられているのは、まさに五感を働かせているおかげです。

「健康のためにウォーキングしなければ」という発想から解放されると、心持ちがとても自由になることでしょう。ウォーキングや散歩の途中に休憩するのだってありですし、バスでちょっと遠出して知らない街を散歩し、帰りには、時にタクシーを使ったって構わないじゃないですか。とにかく楽しみながら、「結果的にウォーキングできていた」を継続することが重要です。

 なお、「おまけ」だとしても、歩いていることに変わりはないわけですから、大事な足を守るために靴選びは極めて大切です。なにしろ裸足では歩けません。靴なくしては始まらないのです。多少高価であっても、靴だけは自分の足の形にあったウォーキングシューズを買ってください。注意すべきは、外国メーカーのウォーキングシューズは幅が狭い場合が多い点です。日本人には、やはり多くの場合、国内メーカーの幅広のものの方がフィットすると思います。いずれにしても、ネット購入はもってのほかで、必ず試し履きをしてから買うことをお勧めします。

 さらに、いつまでも歩き続けられる体を保っていくには、トレーニングと共に食事も重要です。骨を弱らせないためにカルシウム、またカルシウムの吸収を促進するビタミンDの摂取を心がけてください。そして、筋肉の源となるたんぱく質の摂取も必要不可欠です。

 楽をしたい私は、10個パックの卵を買ってきたら、8個くらいはゆで卵にして、冷蔵庫で保管するようにしています。そうしておくと、どんなメニューの時にも、ゆで卵を1個加えることで簡単に良質なたんぱく源を補うことができるので、ぜひ試してください。ちなみに残りの二つは、目玉焼きやスクランブルエッグといったその他の卵料理用に使っています。

90歳を超えた女性が……

 トレーニングに食事、そして五感を働かせる重要性をここまでお話ししてきました。それでも、ウォーキングはおっくうでどうしてもモチベーションが湧かないという高齢者に、次の話を紹介したいと思います。

 私が運動を指導している人の中に、90歳を超えた女性がいて、その女性は歩いても15分くらいの距離の運動教室に車で通っていました。彼女の太腿を触ってみると、筋肉がほとんどなくまるで骨の棒のようでした。

 ところが、歩行訓練などを続けたところ、彼女は歩いて教室に通うようになり、2階の教室に階段を使って上がってくるようにもなりました。太腿を触ってみると、ちゃんと筋肉がついていた。90歳を超えても筋肉は鍛えられるという生きた教材ではないでしょうか。

 死ぬまで自らの足で歩き、なるべく介護の世話にならない。それを目指してみなさん、ぜひウォーキングや散歩を楽しんでください。なお、私の夢は85歳でマスターズ陸上の60メートル走にチャレンジすること、そして人生の最後の最後まで歩き続け、自分の足で棺桶の中に入ることです(笑)。

石田良恵(いしだよしえ)
女子美術大学名誉教授。1942年生まれ。保健学博士。89~90年には米フロリダ大学スポーツ科学研究所の客員教授を務める。身体組成などが専門。高齢者を中心に運動指導を続けている。『一生、山に登るための体づくり』『ボケない散歩』などの著書がある。

週刊新潮 2026年2月19日号掲載

特別読物「歩くことは人間にとって最良の薬 シニアのための『ウォーキング術』」より

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