「太腿を触ると、筋肉がほとんどなく骨の棒のようで…」 要介護にならないための「歩き方」を80代の健康インストラクターが指南

ドクター新潮 ライフ

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結果として歩いている

 はじめに、歩くことにどれだけの健康効果があるかについて説明したいと思います。

 英国在住の約7万8000人を対象にした研究では、1日平均3800歩前後歩くと認知症のリスクが約25%低下し、9800歩前後になると50%程度まで下がると報告されています。

 また、65歳以上を対象にしたイタリアの調査によると、ウォーキングの習慣がある人や普段から体をよく動かしている人は、脳血管性認知症の発症リスクが7割以上も低下することが明らかになっています。

 効果は認知症に限った話ではありません。国土交通省の試算では、1日1500歩多く歩くと、年間で約3万5000円の医療費が節約できるとされています。歩くことで血流や新陳代謝などが改善し、さまざまな病気の発症リスクが下がるのです。

 そう言われても、この年になってウォーキングなんてとても無理……。私が指導する運動教室に来られる方の中にもそう言う人はいます。暑かったり、寒かったりするのに、わざわざ外に出てウォーキングするのは面倒くさい、と。その気持ちはよく分かります。なにしろ私自身、できるだけ楽をして生きていきたいと思っている人間の一人ですから。

 そんな私のような人間でも、なぜウォーキング、散歩を続けられているのか。逆説的に聞こえるかもしれませんが、それは「歩こうとしていない」からです。

 ウォーキングしなければ、とにかく歩かなければ――そう考えるとおっくうになる。であれば、歩くことそれ自体を目的としない。これが肝心だと私は考えています。

 例えば、これから春にかけてであれば、近くの公園の梅は咲いたか、桜のつぼみはどうなっているかを見に行く。季節の移り変わりを愛(め)でることが目的であって、結果として歩いている。これが「歩こうとしていない」、より正確には「歩くことのみを目的としない」の意味するところです。

正しい歩き方

 こうして歩こうとするのではなく、とにかく外に出て環境を楽しもうとすると、初めはほんの数分でも、そのうちに歩ける時間は確実に延びていくでしょう。他の臓器と違って筋肉は何歳からでも鍛えられ、歩いていれば足の筋肉も徐々に丈夫になっていくはずだからです。

 ショッピングモールや百貨店に、ウィンドーショッピングをしに出かける。これだって立派なウォーキングです。もちろん、他のお客さんに注意しながらになりますが、空調が効いていて、季節に関係なく歩ける利点もあります。

 いずれにしても、歩くこと、散歩することだけを目的にしない。これが継続のコツです。どんな小さな歩みでもいいから、まずはとにかく一歩を踏み出してみてください。

 それを理解していただいた上で、歩くことによってもたらされる健康効果をより増大するために大事な点があります。それは、かかとから地面につき、最後にしっかりとつま先で地面を蹴って歩くという「正しい歩き方」です。そうしなければ、躍動感が出ず、スピードを上げて前に進むことができないため、ペタペタとした歩き方になってしまうのです。

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