とにかく怒鳴る、遅刻10分で罰金1000円、業績目的で偽装…「ブラックな職場」はなぜ映画に向いているのか【おすすめ作品5選】

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警察という「会社」

〇「日本で一番悪い奴ら」(2016年)

 警察内には警察組織を「カイシャ」と呼ぶ隠語がある。本作はそのカイシャに入社した新人刑事の、26年間の物語だ。

 大学柔道部の実績を買われた諸星(綾野剛)は、北海道県警の新人刑事になり機動捜査隊に配属された。ある日ベテラン刑事・村井(ピエール滝)から、高級クラブでレクチャーを受ける。「調書なんか無駄だ、スパイを作れ」と。やがて村井が嵌められ失脚すると、諸星が繁華街の顔になり暴力団と付き合いスパイを作る。さらに、カイシャの業績を上げるために数々の偽装工作をするのだ。

 正義感溢れる新人刑事から、闇社会に精通しついには覚せい剤にまで手を出して身を滅ぼす。その姿を、疾走感を持って描き出す。綾野剛は監督がカットをかけないと、そのまま演技を続けるほどのめり込んでいたという。本作で、日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞した。

 本作は、実際に起こった“稲葉事件”をモチーフにしている。2002年、北海道警の警部が覚せい剤取締法違反容疑と銃砲刀剣類所持等取締法違反容疑で逮捕され、やらせ捜査などが明るみに出た。北海道警の裏金事件が発覚するきっかけにもなる。

 白石和彌監督は「いつのまにか犯罪を犯しているような場所にいる、そういうことが誰にも起こりうるんじゃないか」と語る(「キネマ旬報」2016年6月下旬号)。警察組織も一般の会社と変わらない構造なのかもしれない。

採用試験の嘘

〇「六人の嘘つきな大学生」(2021年)

 昨今は働き方改革もあり、ブラック企業はかつてのような「怒号が飛び交う」「力技で働かせる」といった分かりやすいものから、より巧妙で気づきにくい形へと進化しているという。本作は大学生の誰もが憧れる企業が舞台だ。しかし、その採用方法はあまりにもブラックだった。

 人気企業の新卒採用で最終選考に6人の大学生が進んだ。全員内定もあり得ると聞いて、皆で集まり懇親を深める。しかし直前になって会社から採用は1人だけで、内定者は6人で話し合って決めるよう通達された。

 この時点で「こんなことを言う会社はやめとけ、ブラックだよ」と言いたくなるが、誰でも憧れる企業に皆どうしても入りたい。6人は投票で1人の内定者を決めることにするが、会議室内で不審な封筒が発見された。そこには6人それぞれの嘘と秘密が書かれた文書が入っていたのだ。

 就活をする大学生たちのさわやかな青春物語から、一転して各自の本音が出て疑心暗鬼の場へと変貌するのが面白い。秘密を暴露する文書を書いたのは誰なのか。やがて犯人が明らかになり内定者が決まるが、謎は残ったままだ。

 8年後、かつての就活生たちが集まり当時の真相が明らかになる。この時集まったのは6人ではなく5人だった。それはなぜなのか、そして誰が合格者となったのか……。

 ミステリー映画にはよくあることだが、多少展開に無理もある。しかしそれがあまり気にならないのは、豪華なキャスト陣のおかげだろう。浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠と、旬の役者が、各々のキャラクターを巧みに演じていて見飽きない。

稲森浩介(いなもり・こうすけ)
映画解説者。出版社勤務時代は映画雑誌などを編集

デイリー新潮編集部

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