とにかく怒鳴る、遅刻10分で罰金1000円、業績目的で偽装…「ブラックな職場」はなぜ映画に向いているのか【おすすめ作品5選】

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希望を捨てずに生きること

〇「ちょっと今から仕事やめてくる」(2017年)

 働く場所がここにしかないと思いこませ、会社に隷属させるのは、ブラック企業の典型的なやり口だ。

 上司から過酷な業務を命じられ、心身とも疲れ果てた青山(工藤阿須加)。朦朧とし電車にはねられそうなところを助けてくれたヤマモト(福士蒼汰)は、小学生時の同級生だという。彼の明るさに影響され希望を持ち始める青山だったが、ヤマモトは3年前に自殺していたことを知る。

 青山の会社のブラック度は筋金入りだ。朝はラジオ体操から始まり、社訓の「遅刻は十分で千円の罰金」とか「有休なんていらない」などを全員で唱える。

 威圧的な上司役・吉田鋼太郎の演技に、気分が悪くなる人もいるかもしれない。自分のミスを部下のせいにする理不尽さ、土下座の強制、セクハラ、残業150時間など人間の精神を追い詰めるあらゆる事が描かれる。仕事ができる先輩(黒木華)が、徐々に疲弊していく様子が痛ましい。

 主演の福士は「ストロボ・エッジ」(2015年)などで大きく注目されていた時期だ。成島出監督は、福士にいろんな映画を見てもらうなど、大スクリーンで芝居をするための意識改革をしてもらったという。そして「伸びる俳優は素直さというか、吸収していくスピードがある」と大きく評価している(『キネマ旬報』2017年7月上旬号)。

 また成島監督は、悩んでいる人にこうメッセージを送る。「ここにいられないのだったら、別の場所へ行けばいい。だからまず希望を捨てずに生きること」と(同)。

 同じような状況で苦しんでいる人に寄り添う作品だ。

パワハラ上司と付き合う方法

〇「レディ in ホワイト」(2018年)

 理不尽な上司に一発かましたいとは思うが、現実はなかなか難しい。そんな鬱屈した思いを吹き飛ばしてくれるような痛快な1作だ。

 社長令嬢・如月彩花(吉本実憂)は、何不自由なく育ち、物怖じしない性格だ。ホワイト企業に新卒で入社し企画部に配属されるが、カリスマ上司(波岡一喜)は、部下を奴隷のように使うパワハラ体質だった。一方で彩花も敬語は使えず、指示には従わない問題児で上司とやり合う。しかし、父の会社が突然倒産してしまった。そんな中、社運を賭けた企画が彩花に託され……。

 彩花の勤める会社はブラックではないが、会社の業績を押し上げた功労者が好き勝手をしている。誰もが気をつかう上司に敢然と立ち向かう彩花の姿が小気味よく、つい応援したくなる。

 その理由は吉本の演技だ。コロコロとよく変わる表情で上司とやり合うと思えば、感激するとすぐにボロボロと涙を流す魅力的なキャラクターなのだ。

 吉本は当初は彩花のイメージが湧かずに、役作りに苦労したという。それでも「肩の力が抜けたというか、肩に乗っていたものが落ちたような感じがして」彩花を演じられたそうだ(『ウォーカープラス』2018年11月)。

 2012年に「国民的美少女コンテスト」でグランプリを受賞し芸能界入りした吉本は、2014年に女優デビュー。2021年には「瞽女 GOZE」(2020年)で、日本映画批評家大賞の小森和子賞を受賞した。

「国民的美少女」も今年30歳を迎える。これからも様々な役に挑戦してもらいたい。

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