戸建て暮らしの40代シングルマザーがNG「保護猫譲渡会」の現実 飼育放棄は防ぎたいが厳しすぎれば生体販売へ…のジレンマ

国内 社会

  • ブックマーク

求められる「覚悟」

 団体ごとに基準が異なる譲渡の条件。

「保護猫たちはそれぞれ、過酷な生い立ちを持っています。その幸せを第一に考えれば、厳しい基準は不可欠ですね」

 と語るのは、全国に保護猫カフェを展開する「ネコリパブリック」代表の河瀬麻花さんだ。

「例えばうちの場合、譲渡会に参加したらまずは猫たちと直接触れ合い、家族に迎えたい猫を決めます。その際、最初に記入していただくのが、A3用紙3枚分のエントリーシートです」(河瀬さん、以下同)

 エントリーシートの記入項目はかなり細かい。同居家族に加え、出入りする親族の有無も尋ねる「家族構成」、賃貸か持ち家か、マンションか一戸建てかなどの「住環境」、先住猫の有無と飼い方、過去のペットの死因や寿命といった「飼育歴」、ほか、かかりつけ予定の動物病院名、離婚した場合の親権、家族にアレルギーが出た場合の対応など、今後のライフスタイルの変化への心構えなどなど……。

 そして、このシートを基に30分程度の面談を行い、身分証による本人確認を求める。さらに自宅の間取り、ドアや窓の位置を写真で精査する。賃貸であればペット飼育可とわかる契約書のコピーや各種誓約書の提出もお願いするそうだ。審査に合格すれば、ようやく2週間の「トライアル期間」となる。

「トライアルは、スタッフが猫をご自宅までお届けし、飼育環境やご家族の同意やお顔を確認、脱走防止策を直接確認します。期間中も、初日の食事風景の報告や、3日おきの安否確認をお願いしています」

 こうして里親・猫ともに問題がないと判断されて初めて「完全譲渡」の契約書を交わす。最短でも3週間の道のりだ。手間も時間も、そして心理的な覚悟も、ペットショップでの購入とは比較にならないほど重いようだ。

 過去に起きた痛ましい虐待事件なども「手順の多さ」の背景の一つといえる。2017年に13匹の猫を惨殺して有罪となった元税理士の男が最近、譲渡会に姿を現したとの目撃情報がSNSで拡散。今なお多くの愛護団体の間で強い警戒が続いている。譲渡会や煩雑な手続きはまさに、猫たちの命を守る「防波堤」の役割を持つのだ。

 さて、手順は多いものの、河瀬さんのネコリパブリックは高齢世帯や単身者など、多様な家庭への譲渡実績がある。

「条件の厳しさではなく、その命を最期まで守り抜こうとする覚悟と環境があるかどうかが大事。画一的な条件ではなく、それぞれの家庭の状況や猫への向き合い方を大切に判断していけたらと思っています」

次ページ:一律の条件よりも「人となり」に向き合う

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。