「母は聖なるものだから」産後の妻は手も握らせない…45歳夫の情欲が向かった先は 今では「冷えた夫婦仲でいい」と割り切るまでに

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愛するがゆえに縛れない…「客の誰かを好きになったらつらい」

「息子は今、11歳です。妻の梨惠は、息子に私立中学を受験させようと必死になってる。でも息子は『嫌だよ』と言い続けている。もういいかげんにしなさい、今からじゃ間に合わないだろうし、なにより本人の意志を尊重したほうがいいと僕も息子の味方をしている。そのせいか、少し梨惠の情緒が不安定なんですよね。そういうことも佐保には話しています。息子が成人するまで待ってほしいとは言えない、僕は佐保の人生を縛れない。僕から裏切ることは絶対にないと伝えることしかできません」

 佐保さんを愛するがゆえに縛れない。人を好きになることがこれほどまでに苦しいとは想像もしなかったと寛太さんは涙目になった。

「彼女が仕事で風俗をしている分には問題ないけど、客の誰かを好きになったらつらいだろうなとは思います。僕のような立場の人間が他にも出てきたら……。その客が独身なら、僕は黙って身を退くしかない。そう決めてはいるけど、そういう日が来るかもしれないと考えただけで涙が出てくるんです」

 すっかり恋という沼に全身浸かってしまった寛太さんだが、そんな今を幸せだとも思うと言った。妻に知られてもかまわないと思うこともあるが、息子に知られたくはないのが本音のようだ。

「人生の後半になったら、少しでもわかり合える人と生活をともにしたい。そんなふうに思います。佐保を縛りたくないと口では言ってるけど、本当は佐保に捨てられたらもう生きていけないと思うこともある。自分でもわからなかったけど、僕は孤独に弱いんですよ……。孤独に強かったらとっくに離婚していると思う」

「妻との関係はもういい」

 梨惠さんとは口をきかないわけではない。息子の手前、ごく普通にふるまってはいるが、関係が悪くなったというわけではなく関係が冷え切っているのだと寛太さんは言う。妻が実家に入りびたっているのを強く咎めることができなかったのは自分だし、もっと妻の気持ちを自分に向かせる努力をしたほうがよかったのかもしれない。だが相手は大人である。子どものように言い聞かせるわけにも、無理矢理言うことをきかせることもできはしない。妻の意志を尊重した結果が今なのだ。

「だから妻との関係はもうこのまま膠着状態でいいんです。佐保との関係だけを見て、考えていきたい。フラれることも想定内です。今年に入ってから、もう一度気合いを入れて、仕事も私生活もがんばろうと思っているところです」

 最後は空元気にも見えたが、45歳にして恋を知った男の顔は、どこか純粋だった。佐保さんの心が離れていかないように、彼はオトコを磨くつもりだと自分に言い聞かせるように言った。

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 妻の梨惠さんにとっては、ある意味で残酷なほどの“本音”を、彼は抱えている。それほどまでに関係をこじらせてしまった背景には、梨惠さんとの馴れ初めや彼の生い立ちに、見過ごせない事情があるのかもしれない。【記事前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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