夜勤の妻が行為中なのに眠ってしまう…「侮辱された気がする」 39歳夫の寂しさを埋めた“まさかの副業”は許されるのか
妻は不審感を抱くも
詳細は言えないとしながら、僕の第二の人生が始まったと明るい気持ちになったと彼は語る。自分を殺しても相手に奉仕し、相手の喜びを自分のものとする。接客は、そんな彼の理想が満たされていく時間でもあったようだ。
「最初に接した常連のお客さんは、その後も僕を指名してくれるんです。彼女には何でも言える、10歳ほど年上ですが母親のように甘えています」
彼の副業はおもに週末だ。平日でも「どうしても」という客がいれば、仕事のあとに駆けつける。最初は客の伸びがそれほどよくなかったのだが、じわじわと人気が出てきた、やはり私の目は節穴じゃなかったわと社長に喜ばれた。
「ただ、妻は不審に思っていたようです。特に週末、どこに行くのと言うようになった。仕事だよ、副業を始めたんだと言いました。それは嘘じゃないし。本当のことは言わぬが花でしょう」
コロナ禍で一時期、ほとんど仕事はなくなったが、すぐに仕事が戻ってきた。人と会わなくなった分、寂しさを感じる女性たちが連絡してくるようになったのだろう。
「妻ひとり」に求めたことが間違いだった?
今は無理なく、副業を楽しんでいると謙二郎さんは言う。とはいえ、彼の心は本当に満たされているのだろうか。
「妻ひとりにすべてを求めようとしたのが間違いだったと思うようにしています。仕事で疑似恋愛を積み重ねていくうちに、何が本物で何が偽物なのかわからなくなった。金が介在する関係であっても、その時間だけはお互いに本気ということもある。僕は娘のためなら命を投げ出す覚悟はある。娘が車にひかれそうになったら、娘を助けて自分がひかれてもいい。妻との関係は、おそらくお互いに不満を抱えたままなのかもしれませんが、そこを炙り出す必要もないと思えるようになっています」
昨春、娘が10歳になった。ひと区切りがついた心境なのか、ぽつりと「もう一度、仕事しようかな」とつぶやいた。
「まだ踏ん切りはついていないようですが、いずれは再開するのかもしれませんね。それは妻に任せます。僕、副業を始めたことで初めて自立したような気がしているんです。妻に“母”を求めなくなった。妻は妻で好きなようにすればいいと思えるようになった。とはいっても副業も人気商売だから、ずっとできるものではない。40歳までやって、その後はまた別の道を考えようと思っています」
自分の人生を整理して話せたような気がすると、彼は妙に晴れやかな笑顔を見せ、丁寧に一礼して去っていった。
見送りながら、少し複雑な思いが残った。ただ、善悪はともかく、彼の携わる「副業」においては、その人自身にある種の「価値」がつく。それは自信にもつながるのだろう。彼がさまざまな思いを乗り越えて、人として自立したと思えるなら、それもまた彼の人生。幸あれと小さく祈るしかない。
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謙二郎さんが始めた「副業」。第三者の立場からするといささか思い切った選択のように思えるが、少なくとも本人はやりがいを感じているようだ。【記事前編】では、謙二郎さんを形作った原体験を紹介している。
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