幼少期の入院が生んだ「白衣の天使」幻想 妻とは看護師合コンで結婚するも…39歳夫を襲う“嫉妬”の正体

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【前後編の前編/後編を読む】夜勤の妻が行為中なのに眠ってしまう…「侮辱された気がする」 39歳夫の寂しさを埋めた“まさかの副業”は許されるのか

 昔から、男性には女性へのある種のイメージ先行型憧憬というものがある。たとえば、看護師、保育士などホスピタリティの高い職業に就いている女性への憧れ、あるいは教師や尼僧など「冒すべからず」とされる職業の女性を自分の意のままにしたい欲求などをよく耳にする。とことん甘えられるか、逆にとことん支配できるか。そんな妄想を満たすポルノ映像も少なからずある。女性でもまれに男性の「制服フェチ」がいるが、男性ほどは多くないように思う。基本的に女性のほうが支配欲が薄いのか、自覚しないままに支配して満足する能力が高いのかはわからない。

「僕にはもともと白衣の天使への憧れがありました」

 酒田謙二郎さん(39歳・仮名=以下同)は照れたようにうつむいた。その人個人ではなく、白衣の天使そのものに憧れるというメンタリティがそもそも共感しづらいのだが、そういう人だと受け止めるしかない。ただ、話を聞いていくと、彼の場合はそうなるのもやむを得ないと思えた。

「いい子だから言うこと聞いて」

「僕は先天的に心臓に疾患があって、小学校に入る直前、手術をして完治するまで入退院を繰り返していたんです。僕には実は兄がいたけど生まれて2週間で亡くなってしまった。両親はそのショックから立ち直ろうとし、3年後に僕が生まれた。だけど僕にも疾患があったため、父は家を出て行ってしまったそうです。優しい人だったらしいから、次男の僕までいなくなるのではないかと恐怖に震えて、一緒に暮らしていけなくなったらしい。男はストレスに弱いというのが母の口癖でした。母はひとりで働きながら、僕のめんどうも見ていたから、入院中、母は夜か週末しか来なかった。近くに祖父母がいたんですが、祖母が病気がちで祖父が介護していたために、なかなか来られない。家族が来ない寂しさを埋めてくれたのが小児病棟の看護師さんでした」

 担当の看護師さんはみんな優しかった。当時はまさに「白衣の天使」に見えたと彼は振り返る。

「わがまま言うと、看護師さんが本当に悲しそうな顔をして『謙ちゃん、お願い。いい子だから言うこと聞いて』と言うんです。その声が今も耳に残ってる。甘くてとろりと耳から脳に入ってくるような声なんですよね。だから看護師さんが好きになった」

 小学校に入ってからは急速に体調が回復し、祖父から“やんちゃ坊主”と言われるほど元気になった。

「うちは親戚づきあいというものがほとんどなかったんです。祖父は東北、祖母は九州、どちらもかなり田舎の出身なんですが、ふたりともきょうだいが多くて地元や地元近くで暮らしている。祖父は東京に出てきたときに、もうふるさととは縁が切れたと言っていました。理由はわからないけど、人間関係が複雑でいろいろあったみたい。祖母も口減らしのように東京に働きに来て、そのままほとんど帰らなかった。母はひとりっ子なので、親戚が集まるということはほぼなかったですね」

 正月も母と祖父母と4人で過ごした。高校生のころ、友だちと初詣に行った。帰りに友だちが「今日、親戚のうちで集まりがあるんだけど一緒に行かない? ちょっと顔だけ出して、そのままふたりで抜けて遊びに行こうぜ」と言ってくれた。親戚の家に行ってみると、総勢20人以上があつまり、大宴会の真っ最中だった。おもしろかったのは、女性たちがみんな座って飲んだりしゃべったりしていて、男性陣がせっせと料理を運んだり取り分けたりしていることだった。

「うちはずっとああいう感じ。男たちが奉仕するのが新年の行事なんだよと友人は笑っていました。なるほど、こっちのほうが明るくて楽しそうだと目から鱗が落ちましたね。入院生活が長かったことと、友人宅で見た光景。このふたつが僕の恋愛観の原点になっていると思います」

 つまり彼は看護師に無防備に甘えたい気持ちがあり、その一方で女性に奉仕する男でありたいとも思っていたのだ。それが両立するかどうかは、どんな相手に巡り会えるかにかかっているのかもしれない。

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