「仮釈放中」の男が乳児の頭に刃物を突き立て…05年「乳児刺殺事件」はなぜ「懲役22年」になったのか

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第1回【「子供の頭に刃物を突き立てた!」と叫ぶ声が…05年の乳児刺殺事件、仮釈放から1週間で凶行に走った男の壮絶な半生】を読む

 2005年1月27日、窃盗罪で服役していた34歳の男が刑務所を仮出所した。そのまま更生保護施設に入ったが3日で姿を消し、2月4日に11カ月の乳児を母親の目前で殺害。しかも、現場は営業中の大型スーパー店内だった――。その残忍な殺害方法と、刑事責任能力をめぐる議論で注目された21年前の乳児刺殺事件。「週刊新潮」のバックナンバーで当時の状況を振り返る。

(全2回の第2回:以下「週刊新潮」2005年2月17日号「乳児刺殺 『34歳通り魔』を誰が『仮釈放』させたか」を再編集しました。年齢、肩書き等は掲載当時のものです)

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親類の紹介で新潟へ

 1人になったUはこの頃から地元を離れて、関西などの工事現場に出かけ、しばらく帰ってこないことが多くなった。

「いちど25~26歳のころ、ふらりと戻ってきて大騒ぎになったことがありましてね。ずっと空き家だった家に灯りがついていたものだから、のぞいてみたらUがいたのです」(同)

 突然舞い戻ったUの姿に近所の住人たちは仰天した。衣服や靴は摩り切れてボロボロ。体からは異臭を放ち、どこにぶつけたのか足に怪我をしていた。

「お金がなくて歩いて故郷に戻ってきたようでした。あんまり可哀相だから、町内会で面倒をみることになったのです。お風呂にも入れて、衣服も揃え、床屋にも連れて行きました。本人は礼儀正しく“ありがとうございます”と感謝していましたけどね」(同)

 しばらくするとUは、親類の紹介で新潟県の建設現場に就職する。だが、この時以来、地元で姿を見たものはいない。まるで故郷と縁を切ったかのように。

「いらいらしていた」

 Uは逮捕後、取調べに対して素直に応じ、「申し訳ない」と反省して見せている。だが、実際には涙を見せるどころか食欲は旺盛、夜はぐっすり寝ているという。

「いらいらしていた」

 と犯行の動機を供述しているが、これで片付けられては、遺族も浮かばれまい。

「報道されている内容を読む限り、犯人が精神病なのは間違いありません」

 そう言うのは精神科医の町沢静夫氏だ。

「Uが“殺せ”という幻聴を聞いて犯行に及んだということから、統合失調症である可能性が高いと思われます。しかも、今回のケースでは仮釈放されてすぐに再犯に及んでいる。もし、事前に精神医学の専門家に診察させるなどしていれば、こんなことにはならなかったはずです」

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