「政治系のショート動画作成で月収400万円」 高市旋風を生み出したのは広告動画だけではなかった 「政治的な立場から応援しているわけではない」
オークション形式
また、「セグメント設定」という機能でターゲットの選別が可能だ。
「広告を掲載する際、特定のトピックに関心を持つユーザーに配信先を絞ることができます。これにより、例えばドライブの動画を検索すると、自動車メーカーの広告動画が流れるわけです」(木村氏)
特徴的なのは広告の出稿が「オークション形式」であることだ。
「入札制なので“1回10円で出します”という広告主と“100円出します”という広告主がいたら、100円を提示した広告主の広告が優先的に表示されます。ただし、グーグルは競りの計算を自動でやる。広告主は細かい入札の代わりに、1日の広告予算額を設定します」(同)
例えば“1日1万円まで”と上限を決めると、1万円の範囲内でグーグルが自動的に広告の枠に入札するのだという。
以上のような特殊な仕組みを前提に、件の動画の広告費を木村氏が試算する。
「ユーチューブ広告の単価は配信の仕方にもよりますが、例の自民党の広告は1視聴あたりだいたい1.5円から高くても2円程度が目安だと考えられます。1.6億回、全て広告として再生された場合、仮に1視聴1.5円で計算すると2.4億円、2円で計算すると3.2億円。なので、2億~3億円くらいが現実的なラインだと思います。1日あたりの上限予算を2000万円程度に設定して、ターゲットなどを定めずに広告を配信したものとみられます」
今年の自民の政党交付金は約125億円で、企業・団体献金の収入も多く、少数政党に比べれば格段に懐事情は温かい。3億円の出費など痛くも痒くもないだろう。だが、1億総スマホ時代に特化したこうした広報戦略はいったいどのように生まれたのか。
「自民党広報本部の広報戦略局には、大手広告代理店の社員が常駐しています。公示の1週間前からは『情報戦略会議』が開かれ、選挙期間中の広報戦略や報道対応について協議が行われる。会議には、広報本部や選対本部、組織運動本部の職員に加え、代理店の社員も参加します。党職員はネット広告に精通しているわけではないため、基本的には代理店に頼りきりです」(自民党関係者)
「最高月収は月400万円」
もっとも、“高市旋風”は党の動画広告だけで起きたわけではないという。
「昨年の参院選で参政党が躍進した理由の一つに、神谷宗幣代表の記者会見や演説風景を切り抜いたショート動画の流行がありました。今度の選挙ではそれと同じことが高市首相に起こったのです」(前出の自民党関係者)
首相が声を振り絞って演説する様子などがスマホで視聴しやすい縦長のショート動画として切り抜かれ、これが大量に拡散されたのだ。
実際に切り抜き系ショート動画を作成している男性(26)に聞いた。
「普段は旅行会社で正社員をしています。もとはショート動画向けの台本を作るアルバイトをしていました。政治系のショート動画の制作に関心を持つようになったのは、一昨年の夏ごろ。参政党などに関する政治案件の台本を作成したことがきっかけでした」
ショート動画の収益は、1再生あたりおおよそ0.02円前後だという。
「1000万再生で約20万円の計算です。主に参政党関連で稼いだユーチューブ・チャンネルは、完全にショート動画一本勝負で、最高月収は月400万円でした。月で2億再生前後は回っていたはずです。そのチャンネルはある企業に1000万円以上で売却しました」(同)
男性が新しく立ち上げたチャンネルでは今、主に高市首相を取り上げているが、
「政治的な立場から応援したいわけではありません。高市首相はネット戦略に力を入れており、関連の動画がものすごく伸びている状況がある。人気のテーマでショート動画のコンテンツを作っているだけです。逆に最近は『参政党』というワード自体が再生数につながりにくくなっている印象があります」(同)
高市首相は党の動画広告を呼び水として、営利目的の大量のショート動画をも誘発して地滑り的勝利を手にした。若年層、無党派層を動かした風は“人為的”に作られたのである。







