“笑える”朝ドラから一変 「ばけばけ」が描き始めた“人間の見苦しさ” 世間の目、引け目、嫉妬心
今年に入りスタイル変化
昨年末放送分までの「ばけばけ」はコミカル色が強かった。トキには次々と苦難が襲ったが、それでも笑えた。出て来るのはお人好しばかり。死んだ金貸しの森山善太郎(岩谷健司)も口ではトキに遊郭への身売りを勧めたものの、どこか間が抜けていた。
今年に入ってからスタイルが変化した。誰にでもありがちな人間の見苦しさを描いている。トキに対しサワが引け目や嫉妬心を感じたことによる2人の仲違いもそう。ヘブンが家族全員の面倒を見てくれていながら、熊本に単身赴任させようとしたトキの自分本位の考えも当てはまる。
庄田の言動もそうだ。第83回(1月28日)、庄田は求愛を断られる前のサワを誘い、花田旅館で昼食をとった。その際、錦織について触れた。
庄田は錦織の出世ぶりに嫉妬めいた感情を抱いていると告白した。さらに校長に就く予定だった錦織の後任英語教師の口を断ったと言い、自分は中学教員検定試験に合格したと言った。そしてこう続けた。
「ワシがいると、錦織がやりにくいんじゃないかと思って。仲が悪いわけじゃなくてね」(庄田)
サワが食事にむせたので、庄田による錦織の話はここまで。ふじき氏の計算であり、庄田が何を言いたかったのかは観る側の想像に任せた。
そもそもサワがむせなくても錦織の話は終わりだったのかも知れない。一方で錦織の不合格を口にしてしまった可能性もある。そうでなくても「錦織がやりにくいんじゃないか」などと思わせぶりなことを言う必要はなかった。サワは気付いたかも知れぬ。庄田は好きな女性の前で自分の優秀さを強調したかったのか。
誰でもときに見苦しい。ふじき氏はあえてそれを書いている。綺麗事の物語で終わらせなかった。
人間が避けられない悲劇も加えた。病である。錦織は吐血した。おそらく結核だろう。当時は死の病と呼ばれた。錦織のモデルである西田千太郎も結核で亡くなっている。1897年のことで、34歳の若さだった。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が松江を去ってから約6年後。八雲は悲しみに暮れ、西田を思い出してしまうから、松江に行くのを避けるようになる。
[3/3ページ]

