450万円のロレックスを購入して預託→半年で支払いが止まり、連絡も途絶え…「トケマッチ」だけではない「高級時計詐欺」の実態を、被害者が語る 「紹介者に相談すると“自己破産”を勧められ…」
続く二次被害
このやりとりから2年以上経ちますが、お金は戻ってきていません。会社のHPもアクセスできなくなり、電話をかけてもつながらない状況です。
さらに田尾さんの被害は続きました。田尾さんは、前述の鈴木から「被害者らが多くいるので、集団訴訟をしようとする話がある」とグループLINEで招待されました。被害者はほぼ全員が同じ時期に支払いをされなくなったといいます。
その中心人物は「集団訴訟をするのに2万円を払ってください」といいました。「少しでも返金してもらえれば」の思いから、田尾さんはお金を払いました。しかしその人物もやがて連絡がとれなくなったといいます。被害者らは、二次被害を受けていますが、ネット上ではなりすました人物が存在しますので、こうした詐欺的行為が起きがちになります。
田尾さんは、LINEでつながった他の被害者らとともに、A社の経営者に会いに行ったそうですが「ここに時計がないから払えない」を繰り返すばかりで、十分な説明はなかったそうです。
自己破産が一番早い
田尾さんはもちろん、「全責任を取る」といっていた、紹介者である鈴木にも連絡をしています。しかし、「俺が契約しているわけでも、お金を借りているわけでもなく、紹介してしまったことに罪はあるけど、(弁護士に相談したら)全額払う義務がないって言われた」として、返金をしない姿勢を示しています。
さらに「自己破産して借金を消すのが一番早いと言っていた」との連絡もしてきています。
鈴木も詐欺犯とグルだった可能性もあり、田尾さんは、金銭をだまし取られた上に、友人に裏切られたショックも重なり「うつ病」になってしまい、「死のう」と思った時もあったといいます。田尾さんは会社経営をしていましたが、それもうまくいかなくなってしまっています。
マルチ商法的な手口
鈴木は田尾さんとのメッセージのやりとりのなかで、次のようなシステムの説明をしています。ここからは、この詐欺行為にマルチ商法的な手法が使われていたことがわかります。
「時計貿易1次代理店」と題されたものには、中古店にてロレックスの「購入代行を促して頂き」「24回払いで購入して頂く」となっています。ブローカーへのバックは購入金額の「7%」とあります。まさに鈴木や坂垣はこのブローカーの立場にあたるものと思われます。
さらに「クライアントに渡す金額は代理店の皆様にお任せします。相場5~10万のお渡し」と報酬額も指示されており、まさに田尾さんもこのマニュアルに沿った形での勧誘を受けていたことがわかります。
ブローカーの取り分は「7%」とありますので、450万円の時計を代理購入する人がいれば、31万5000円を受け取れるわけです。
A社とのやりとりにも出てきたB男は闇バイトで主導的役割だったとして逮捕されています。そうした人物を介在させた結果、被害が起きてしまったとすれば、A社は当然、会社として責任を負うべきであり、被害を受けた人たちへの説明責任をしっかりとすることも必要ですが、果たされていません。
このように、会社と契約を結ばせ、本人のクレジットカードで高級腕時計を買わせて、それを預かり、振り込みを一斉に止める。そして自己破産させ、泣き寝入りさせる方向にもっていく。その裏では、勝手に時計を売却して、悪意ある者たちが利ザヤを稼ぐ。こうした詐欺が横行している実態があります。
今回の被害者10人ほどが、警察に相談に行っていますが、被害届は受理されていません。この手口では、最初から時計をだまし取る目的をもって行っていると思われますが、会社形態で行っているため、警察からは、単に会社の経営がなりたたくなって、時計の代金の支払いがなされていないだけであり、「民事不介入」と言われるケースが多く、捜査が十分に行われていない状況もあります。
「トケマッチ」の元代表は逮捕されていますが、このスキームでお金をだまし取ったとみられる他の事件の首謀者らの多くは野に放たれている状況です。この手口による被害の増加の懸念が高まっています。
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