ナンセンスでも未来を語った高市自民と“モルヒネ”しか説かなかった中道 キリギリスより「アリ」を求めてしまう愚かさ
物価高対策につながらないのに
衆院選で有権者が重視するのは「物価高対策」だというのが世論調査の結果で、出口調査でも、投票に際して重視した争点は「物価高対策」だった。それなのに、ひとつの政党の議席としては戦後初の3分の2超えという、自民党の歴史的大勝利に終わった。筆者は腑に落ちないが、理由は高市早苗総理の訴えた政策に、物価高対策につながるものがなかったからである。
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実際、高市総理が唱える「責任ある積極財政」に対しては、金融市場はすでに警戒感をかなり強めている。日本は政府債務残高、すなわち国の借金の対GDP比が、IMF(国際通貨基金)による2025年の推計値で229%にもなる。G7のなかで最悪とされてきたイタリアでも136%なのに、である。
つまり、すでに首が回らないくらいの借金を抱えているのに、高市総理はこれまでの日本の財政運営を「行きすぎた緊縮志向」と決めつけ、財政出動にいっそうの弾みをつけようとしている。実際、昨秋の補正予算は財源の6割を赤字国債に頼り、これから審議される新年度予算案でも国債の新規発行額を増やしている。
これが市場から警戒されないはずがない。市場の日本への信頼が揺らぐから、円が売られて円安になり、国債が売られて長期金利が急騰する。食品の62%、エネルギーの85%を輸入に頼る日本では、円安はそのまま物価高につながる。長期金利の上昇は住宅ローン金利の引き上げに直結するばかりか、今後の国債の利払いが兆単位で増え、財政状況のさらなる悪化を引き起こす。
このように「責任ある積極財政」は、「物価高対策」の正反対を向いている。しかも、高市総理はそのことを隠そうともしない。その象徴が、1月31日に川崎市で選挙の応援中に飛び出した「ホクホク発言」だった。「いま円安だから悪いといわれるけれども、輸出産業にとっては大チャンス。食べるものを売るにも、自動車産業にもアメリカの関税があったけれど、円安がバッファーになった。ものすごく助かりました。円安でもっと助かっているのが外為特会の運用。いまホクホク状態です」。
ちなみに「外為特会」は、円を防衛する際にドルを売るための原資だから、あくまでもドル建てで見るべきもので、円に換算して「ホクホク」だという評価は、なんの意味も持たない。それ以上に、この発言からハッキリとわかるのは、高市総理にとって大切なのは自動車などの輸出産業で、円安による物価高で苦しめられている国民生活は二の次か三の次だ、ということである。
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