弁護士芸人の漫談「弁論」人気のワケ 冤罪事件も生活保護の問題点も「笑い」に昇華させる唯一無二のライブ

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ピン芸人・こたけ正義感

 現役弁護士芸人のこたけ正義感による漫談ライブ「弁論」が、YouTubeでの期間限定配信をきっかけにして大反響を巻き起こしている。法律家としての専門知識とピン芸人としての表現力を融合させた独自のスタイルで社会問題に切り込み、幅広い層から支持を集めている。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 多くの著名人たちもSNSなどで称賛のコメントを発信していて、ライブを実際に見た人や動画の視聴者の感想も多数寄せられている。単なる一芸人のお笑いライブがここまで話題になるのは珍しい。

 もちろん、内容が面白かったから注目されているわけだが、単に面白いライブならほかにもたくさんある。こたけ正義感の「弁論」の魅力とは何なのか。

 彼のライブが注目される最大の理由は、袴田事件や生活保護などの社会問題を取り上げながらも、その本質を決してぼかさない真摯な姿勢にある。彼は社会的なテーマの表面をなぞるだけではなく、弁護士としての専門性を武器にして、具体的な法律や制度の問題点を明確に指摘する。

 しかし、あくまでも漫談という形式の中で行われているので、それが説教臭くはならない。弁護士らしい理屈っぽい語り口で笑いを交えて話を進めることで、重いテーマに観客を引き込む力を持っている。彼の話芸には、聴衆を飽きさせない緩急のつけ方があり、深刻な内容でも最後まで集中して聞き続けられる工夫がちりばめられている。

 今の日本のお笑いシーンでは、「弁論」のように社会的なテーマを真正面から扱うようなものがほとんど存在しない。政治風刺的なネタをやっている人が全くいないわけではないのだが、まだマイナーな動きにとどまっている。

 そういうネタをやる芸人が少ないのは、芸人が不真面目だからでもなければ、日本人の観客の意識が低いからでもない。そもそも日本では、日常で人々が気軽に政治的な話をしたり、社会問題について意見を交わしたりすることがない。仮に誰かがそういう話題を持ち出したら、緊張が走ったり、気まずい空気が流れたりすることの方が多いだろう。

 緊張感や気まずさは、笑いとは相性が悪い。そんな日本の風土では、芸人が人を笑わせようとする場面でわざわざ社会問題を持ち出す積極的な理由がないのである。できないわけではないが、扱いが難しいし、あえてそこに踏み出そうと思う人も少ない。だからそのエリアは長らく日本のお笑いの空白地帯になっていた。

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