偶然を装って声をかけ… 日本企業を狙うロシア人スパイの手口と“おんぼろアジト” 「居住棟はもぬけの殻」
令和の世に“古典的”なスパイ事件が発覚した。企業から情報を掠め取っていたロシア人スパイは本国に逃亡済みだというが、彼らの手口は旧来的、拠点も老朽化が進んでいた。
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戦前から続く手法
警視庁公安部が事件を発表したのは1月20日。在日ロシア連邦通商代表部職員が首都圏の工作機械メーカーに勤める30代男性から営業秘密を聞き出したとして、両名を不正競争防止法違反の疑いで書類送検したという。
「社員は最初、ウクライナ人を名乗る男に道案内を求められた。後日、男から“お礼をさせてほしい”と提案されて交流が始まり、メーカーが持つ技術に関して意見交換するように。面会は約10回、計70万円ほどの現金が謝礼として手渡されていました」(警視庁担当記者)
その手口から、当局はロシアの諜報機関「対外情報庁(SVR)」によるスパイ活動だったとみている。
「相も変わらず同じことやってるな、というのが率直な感想です」
と語るのは、防衛省で対スパイ活動に従事していた吉永ケンジ氏だ。
「町での声がけは、昔からロシア・スパイの常套(じょうとう)手段。彼らは偶然を装って初回の接触を試みる前に、1~2年ほど基礎調査を重ねるのが通例です」(同)
SNSなどのツールが発達した現代で、実に古めかしい接触方法ではないか。
「ロシア人の“鈍感で真面目”な国民性がよく出ているな、と。彼らは戦前から続く手法をかたくなに守り続けているのです」(同)
敷地内にはテニスコートも
当局は、メーカーの社名や特定に至る情報を開示しておらず、一体どんな情報が、かの国に流れたのかは知りようもないのだが、スパイの所属先である通商代表部とは一体どんな組織なのか。
元警視庁公安部外事課勤務で“スパイ捜査のプロ”、勝丸円覚(かつまるえんかく)氏が解説する。
「表向きは日本とロシアの通商を発展させるための出先機関です。代表を含め外交官ポストが三つあるのですが、そのうちの一つをSVRの人間が務めることになっている。職員の中にSVRの息のかかった連中がいて、日夜スパイ活動にいそしんでいるのです」
スパイの“アジト”である通商代表部は、高級住宅地として知られる東京・港区高輪の、広さ5835平方メートルの敷地内に存在する。
「ガラス張りになっている正面の事務所棟の裏に、比較的新しい居住棟と古い居住棟の2棟が並んでおり、敷地内にはテニスコートもあります」
そう語るのは、さる事情通。地下2階、地上9階の新しい居住棟には大使館職員も暮らしているというが、
「地下にシェルターが配備されている古い居住棟は、長らく改築されていないとみえて老朽化が深刻。1階には来客用の会議室があり、2階より上の居住エリアには各階5~6室ほど居住用の部屋がある」(同)
その間取りは基本的に2DKで、2階には居住者同士の交流のためのレクレーションルームまであるという。
「ロシアによるウクライナ侵攻後、欧米諸国と共に日本もロシアへの経済制裁を実施した。すると、日本での仕事がなくなったのか、多くの職員は帰国してしまい、とくに古い居住棟はもぬけの殻だったと聞く。しかし、親ロ姿勢を見せるトランプ米大統領が再選したことで、日本との貿易正常化を見越して、また戻されたんだとか」(同)
“おんぼろアジト”を拠点とするスパイたちもまた、世界情勢に翻弄されているようだ。







