「減税のありがたみはすぐに消える」 専門家が指摘 突如として変節した高市首相の思惑は?

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変節した高市首相

 政治部デスクの解説。

「これまで消費減税は野党の専売特許ともいえる主張でした。一昨年の衆院選、昨年の参院選でも公約に掲げる野党の主張に、当時の自民党は減税を“無責任だ”と一蹴していたのです。社会保障の財源確保が肝要で、国の財政赤字を加速させ次世代にツケを回してはいけないと主張していたはずですが……」

 なのに今回の選挙で自民党は、中道の野田氏と同じく変節してしまったわけだ。

 解散総選挙に際して開いた1月19日の首相会見で、高市氏は消費減税を「悲願」とまで言ってのけた。

 確かに昨年5月の自民党税調会合で、高市氏は消費減税を「国の品格」だと訴えたが、いざトップの座についてからは口を閉ざしていた。首相になったからには、自民党に多い減税懐疑派議員の支持を集めて党内基盤を固めたい。財務省に近い財政規律派とされる麻生太郎副総裁(85)に配慮しているとも言われていたものである。

 実際、昨年秋の国会で野党から“言行不一致”を指摘された高市氏は「レジの壁」を盾に「減税は困難」だと繰り返した。

「高市首相の答弁を端的に言えば、消費税率を引き下げるとスーパーなど小売店のレジ改修に時間がかかるという理屈でした。野党が訴える消費減税について真っ向から否定したのです。昨年12月23日付の『日経新聞』のインタビューでは〈物価高対策としては即効性がない〉とさえ述べた。それが1月19日の会見で、再び主張を一変させて消費減税へとかじを切ったのです」(同)

 かねて高市氏は何よりも物価高対策を優先すると発言してきたが、選挙に勝つためなら〈即効性がない〉政策でも利用するその姿勢は、主張に一貫性がないと思われても仕方なかろう。

 件の会見で高市氏は、

「物価高に苦しむ中・低所得の皆様の負担を減らす上でも、現在、軽減税率が適用されている飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としません」

 と言い切ったが、肝心の減税に代わる「財源」や「実施時期」などの具体案については、選挙後に野党を交えて議論する「国民会議」に委ねるとした。

 先のデスクに言わせれば、

「結果的に高市首相が消費減税を公約としたことで、中道をはじめとする野党との争点が一つ消えたことになります。選挙戦で各党における政策の差異が見えづらければ、与党はいまだ高い支持率を誇る首相の人気が大きな武器となる。政策より人柄やイメージで投票先を決めよう、そう考える有権者が増えてもおかしくありません」

「減税のありがたみはすぐに消える」

 本来、与野党が論ずべきは、消費減税がわれわれの暮らしを良くするものなのか否か、そのメリットとデメリットを具体的に示して審判を仰ぐのが選挙のはずだが、減税が既定路線とは有権者も軽く見られたものだ。

「一見、減税は良い話に聞こえるかもしれませんが、長い目で見たらありがたみはすぐ消えると思いますよ」

 と話すのは、都内を中心にスーパーを展開する「アキダイ」の秋葉弘道社長。

「減税されたとしても、他の名目で増税されないか心配になります。しかも期限付きとなれば、2年後に税率を戻す時に大騒ぎが起こりますよ。元の木阿弥どころか、反動で一気に不景気になるかもしれない。その方がスーパーとしては困ります。ずっと消費税がゼロならまだしも、期限付きの減税なら今のままの方がいい。政治家の皆さんが“減税します”って言うのはバラマキに近いと思う。選挙に勝つために言っているとしか思えなくて……」

 長年、生産者と消費者双方をつなぎ商いを続けてきた秋葉社長は、こう続ける。

「消費者にとって問題なのは、消費税じゃなくて物価高です。台所に欠かせない野菜にはじまり、豚肉、鶏肉、卵の価格はもとより、生産コストが上がって生産者も困っています。畑の肥料や家畜のエサのほとんどは輸入に頼っているそうで、円安の影響でコストも15年前と比べて軒並み2倍近くになっている。円安がさらに進んで輸入コストが上がり続ければ、減税しても8%下がった分なんて一瞬で吹っ飛ぶ。結局は価格に跳ね返ってきますよ」

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