「サカイ」CMで時の人に 華ゆりさんが“ゆっくりしゃべる芸風”で生み出した独自のトリオ芸

エンタメ

  • ブックマーク

 物故者を取り上げてその生涯を振り返るコラム「墓碑銘」は、開始から半世紀となる週刊新潮の超長期連載。今回は1月18日に亡くなった華ゆりさんを取り上げる。

 ***

関西人も絶句

“勉強しまっせ、引っ越しのサカイ”と、眼鏡にちょびひげのおっさんが節回し良く歌い踊れば、相方のふくよかな和服姿のおばはんは“ほんまかいな、そうかいな”と軽快に体を揺する。そして“それでは皆さま、さーようならー”とエレベーター内に消えていく。

 サカイ引越センターのこのテレビコマーシャルには、関西人も絶句。関東でも放送され、全国的な話題となる。同社の業績は急上昇し、1995年には広告好感度の賞まで受賞した。

 ちょびひげは今でこそ名優の誉れ高い徳井優さん。このCMで注目を集めた。おばはん役の華(はな)ゆりさんは当時芸歴約30年。漫才トリオ「フラワーショウ」で活躍、関西では有名人だった。

ゆったりした口調で

 47年、岡山県生まれ。本名は吉岡百合子。20歳以上年の離れた兄は初代京山幸枝若(こうしわか)さん。関西一の人気を誇った浪曲界の大スターだ。「フラワーショウ」は61年結成。メンバー入れ替えで66年、ゆりさんが加入した。

 松竹芸能の元社員で演芸評論家の相羽秋夫さんは振り返る。

「当時、松竹芸能では『かしまし娘』が圧倒的な人気で、女性だけの歌謡漫才トリオが他にいくつも誕生しました。トリオ漫才は、一人だけ存在が薄くなりがちで難しい。『フラワーショウ』もしゃべりの部分は、リーダーの華ぼたんさんのつっこみと、華ばらさんのボケで成立してしまう。そこでゆりさんは、ゆっくりしゃべる芸風を考え、二人の会話に切り込んだ」

 ぼたんさんが、ばらさんをからかい、言い合っていると、ゆりさんがスローテンポで「なんちゅう、かわいそうな言い方」「あまりにも、あわれすぎるわ」などと会話にじわっと加わる。

「ゆりさんのゆったりした口調にイライラしながら、二人はそのペースに巻き込まれて面白みがふくらみ、観客は大爆笑。会話の流れを壊さず、今だ、と入り込む天性の読みは、サカイのCMで合いの手を入れる絶妙さと重なる」(相羽さん)

 放送作家の保志学さんも、

「ゆりさんのアイデアで独自のトリオ芸が生み出され、『かしまし娘』に次ぐ人気を集めるようになった」

次ページ:リーダーの自殺

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。