ハネムーン終了前の電撃解散「高市総理」を悩ませる「三つのギャップ」とは
安倍元総理の語った「チームの大切さ」
そしてギャップの三つ目は、高市総理自身のあり様にある。
高市総理の言葉には確かに迫力があり、その明るさとも相まって、「力強く前に出ていく、パワフルな女性リーダー」像を印象付けている。女性ファッション誌の「エクラ」(集英社)では、エナジェティックな女性という特集テーマに合わせて、高市総理を高く評価するコラムが3本も掲載されているほどだ。
〈パワフルなうえにキュート〉〈彼女の言葉には「メロディー」があり…〉〈「自分らしくあること」が最も力強いエレガンスであることを私たちに教えてくれる〉など、「高市総理本人が見せたい姿」をそのまま受け取って絶賛する文言が並んでいる。
確かに高市総理の明るさ、女性初の首相という重圧を背負いながら前進せんとするキャラクターには好ましい部分があるのだろう。社交的でエネルギッシュ、関西のおばちゃん的なコミュニケーション力、阪神ファンでドラマーというキャラも立っている。日韓首脳会談では李在明大統領とのドラムセッションまで実現した。
だが一方では、毎日新聞などでも報じられているように、高市総理はいわば「引きこもり型」で、官僚からのレクも受けず、情報は紙であげてもらい、それを読むという間接スタイルを取っているようだ。やりたいことがたくさんある、熱意もあるというエナジェティックな振る舞いには目を引かれるが、一方で実現にこぎつけるだけの内実が伴っているのか、その点に不安があるのだ。
安倍内閣で長く官房長官を務め、その後総理に就任した菅義偉は、頻繁に朝食会を開いて各界の現場から意見を吸い上げ、官僚に対しても「俺にとって耳の痛い話でも、思うところは何でも言ってくれ」と声を掛けていたという。こうしたあり様が組織のグリップ力や政策実行能力につながっていた。
イメージと実態の乖離は、選挙に際しての党首討論会などでも露呈しつつある。自信たっぷりに自説を述べる一方で、他党の党首から突っ込まれると具体的に説明することができない場面がある。タカ派で中国からの批判にも物おじしない姿勢はある面では評価できるものの、では高市総理が防衛政策、国際法や防衛法などに詳しいかと言えば必ずしもそうではない。
存立危機事態の説明についても、これまでの政府答弁とは違う受け答えをしたのが何らかの戦略に基づくものであればよい。だが、どうやらそうではなくうっかり口をついて出たもののようだ。デイリー新潮でも報じられたように各省庁から出向している秘書官でも直に話すことが許されていないとなれば、おのずと限界は露呈する(※2)。
高市総理は安倍路線の継承を謳うが、安倍政権の強さの根源を学び実践しているとは言い難い。これこそが、高市政権の足をすくう決定的なギャップかもしれない。
政治学者の牧原出は安倍政権の強さの根源を人材登用、政策プログラムと並んでスケジュール管理にあったとの研究レポートを公開している(※3)。だが高市総理の今回の解散は、徹底したスケジュール管理のもとに行われたものではなさそうだ。
筆者が取材した際、安倍元総理は、次のように述べていた(『安倍晋三 ドナルト・トランプ交友録』、星海社新書)。
「総理といえども、一人では何もできない。チームで事にあたれば、自分に足りないところを補ってもらえる」
「人は、自分を信頼してくれない人のためには働けない」
電撃解散を知る者は周囲にも少なかったという。
「安倍路線の継承」を掲げる高市総理は安倍元総理のメッセージをどう受け取るのだろうか。
※1 (菅原琢の政治分析 2026年1月25日・高い内閣支持率という幻覚が引き起こしたリセマラ解散――低迷する党支持率の下で高市自民はどこに向かうのか?)。
※2 (デイリー新潮 1月15日・「高市さんが官邸で心を許しているのは2人だけ」 ブレーン不足の“異常事態”の裏側)
※3 (PHP「内閣政治」研究会 2024年6月発表・「官邸の作り方」)




