無実の自衛官たちはなぜ「人殺し」にされたのか 「日航機撃墜説」に海自の元最高幹部が“徹底反論”した理由
「絶対に反論しなければならない」
「あの日のことはよく覚えています。防大1年生だった私は、水泳部の遠征で名古屋にいました。夜、試合を終えて宿に帰り、テレビで初めて事故を知りました」
【画像】険しい山を越えて事故現場へ進む人たち…たどり着いた先には凄惨な光景が広がっていた
そう語るのは、昨年末に海上自衛隊を退官した真殿知彦氏(59)である。真殿氏が筑波大学附属高校を卒業して防衛大学校に入校したのは1985年。その年の夏、単独の航空機事故としては史上最大の犠牲者を出した「日本航空123便墜落事故」が発生したのだ。
真殿氏は海上自衛隊幹部学校長、海上幕僚副長、横須賀地方総監などを歴任した海自の元最高幹部だが、退官後まっさきに取り掛かったのは『日航123便墜落「撃墜説」の真相』(PHP研究所、2026年2月2日発売)という本の執筆だった。
「日航機事故に関して、自衛隊が撃墜したなどという陰謀論は昔からありましたが、特に興味はありませんでした。まともな科学的知識を持った人間にとっては、あまりにも馬鹿馬鹿しい与太話で、本気で信じるような人はいないと思っていたのです。
考えが変わったのは2025年4月、横須賀地方総監だった時のことです。テレビで国会中継を見ていたら、当時の佐藤正久参院議員が中谷元防衛大臣に対し、事故をめぐる陰謀論の拡散に警鐘を鳴らしていた。国会で話題になっているのかと驚き、いわゆる撃墜説に関する本を慌てて読んでみたのです。その内容は……衝撃的でした」
真殿氏が読んだのは、「青山透子」なる人物が書いた一連のシリーズ本で、2017年以来、河出書房新社から断続的に出版されている。青山氏の本では、「海上自衛隊の護衛艦まつゆきが事故当日に相模湾で新型ミサイルの発射実験をしており、それが日航機に当たったのが墜落の原因だ」という趣旨の“推理”が展開される。さらに、「垂直尾翼を失った日航機を航空自衛隊のファントム戦闘機が追尾して、群馬県の御巣鷹の尾根上空でトドメを刺した」「陸上自衛隊が証拠隠滅のため、火炎放射器で生き残った乗客ごと機体の残骸を焼き払った」などと主張する。
青山氏の著作は刊行時期によって微妙に内容が変遷しているが、日航機が自衛隊によって撃墜された、というストーリーは一貫している。仮にそれが事実であるとすれば、関わった自衛官たちは大量殺人犯ということになる。520名もの乗員乗客を意図的に殺害した“真犯人”がいるのなら、まずもって極刑は免れないだろう。
「とんでもない主張と論理展開に、心底驚きました。こんな主張が野放しにされて誰も真剣に反論しなかった結果、事故当時は生まれていなかった世代にまで広まっている。自衛隊に40年間務めた者として、これは絶対に反論しなければならないと決意しました」(真殿氏)
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