真顔で「天国に将棋はない」と… 加藤一二三さんが大切にしていた“神からの使命” 「全ての根底に信仰心が」

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「AIには絶対に負けません」

 相手側に回り込んで盤をのぞき込む通称“ひふみんアイ(視線)”についても、昔はぶしつけとされたが、

「あらゆることが“加藤さんだったら、しょうがないか”と許されてしまいました。意地悪なところがない、天真らんまんなキャラクターだったからですね」(同)

 加藤九段と共著を上梓するなど交流を持った脳科学者の茂木健一郎氏(63)も、人柄をこうたたえる。

「いつお目にかかっても加藤さんは、上機嫌で朗らかでした。春風のように、皆を陽気な気持ちにさせてくださる。脳科学的にも天才は、明るくて前向きだという知見があるんです」

 非凡なのは、こうしたところだけではなかった。

「忘れられないのが、何度も繰り返して“AIには絶対に負けません”と言い切っていたことです。もちろん、現実問題として生身の棋士がAIに勝つのは不可能で、加藤さんも頭では分かっていたはず。しかし、理屈を超えた力を信じており、だからこそ長きにわたって強い意志を持ち続け、トップレベルで戦えたのだと思います」(同)

神からの使命

 類いまれなる精神性を誇った背景には一体、何があったのか。茂木氏は、会話をしていた中で驚かされたエピソードを披露する。加藤九段は東京・四谷の「聖イグナチオ教会」に所属する敬虔(けいけん)なカトリック信者だったが、

「ミッション、つまり神からの使命を大切にしていたと思います。私が“天国に行かれても、大好きな将棋を指し続けたいですか”と質問をした時のことです。すると、加藤さんは真顔で“天国に将棋はありません。向こうに行ったら、永遠に神の栄光をたたえるのです”と答えられました。周りを楽しませてくれる愛にあふれた振る舞いも、必ず勝つという確信も、全ての根底には信仰心があったといえるでしょう」

 天国では、将棋盤はなくとも、神様の下でわが道を歩んでいることだろう。

週刊新潮 2026年2月5日号掲載

ワイド特集「宴のあと」より

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