「パンダロス」日本人が早くも台湾に… 香港、マカオ、韓国のご近所パンダ事情

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台湾のパンダは「格」が違う

 さて、台湾である。もともとは2008年に中国から台北動物園に寄贈された「團團」「圓圓」、その2頭から生まれた12歳の雌「圓仔」と5歳の雌「圓寶」の4頭がいたが、父親の「團團」が死亡してしまい、現在は3頭全てが雌。台湾単独では繁殖が不可能になってしまった。

「台湾有事」と巷では言われるように、中台間は日本以上に外交関係の揺れ幅が大きい。「團團」「圓圓」が寄贈された2008年当時は、中国と近しい関係にある国民党政権に変わったため、中国との蜜月を示すためにパンダが台湾にやってきた。しかし10数年を経て、現在は中国と距離を置く民進党政権。外交関係は冷え込んでおり、日本と同様に「また1匹いただけませんでしょうか」といった交渉はしにくい状況下にある。

 中国政府はパンダ外交をひとつの切り札としている。「我が国に譲歩するなら考えなくもない」という条件を突きつける態勢をとってくる可能性は高い。

 ここまで読んで、疑問を覚えた読者がいるかもしれない。通常なら、生後4~5年経過したパンダは、生殖のために中国に返還されるのだが、台湾の場合、12歳「圓仔」5歳「圓寶」共に居続けているのだ。そう、日本をはじめ他の国とは「貸与」関係にあるが、台湾は「寄贈」。返還しなくてもいいからである。

 ここに台湾と中国の「特殊な関係」が浮かび上がる。中国としては台湾を「中国の一部分」と見なしている。そのため、香港、マカオと同様に、台湾へも「贈与」という形をとっているのだ。

 台北動物園も同様の認識と受け止めているため、中国側が何も言ってこない分には、そのまま飼育を続けている。だが、雄がいないということで、中国側には「さらなる生殖用の個体が必要だが、それが叶わないなら、人工授精を試してもよいので、冷凍精子を送ってもらえないか」という旨の交渉も続けているという。

 台北動物園にしてみれば増殖させるための苦労が多々あるわけだが、パンダが中国に戻されることはよほどのことがない限りはない、というところは台湾の現地民にとって心強いところだ。

距離的には台北とソウル マカオは無料で見られる

 筆者は台北動物園からわずか車で5分という地域に居住している。久々にパンダ舎を訪れてみると、思いの外、日本人のパンダファンが訪れていた。和歌山から訪れていた夫婦は「パンダのいる施設から遠くない場所に住んでいるが、まだまだいてくれると思っていたので、ゆっくり訪れることもないまま、突然全部いなくなる、ということになり驚いている。それで近場の台北に見に来ました」とのことだった。他に、上野動物園に赴いて長い行列にならびパンダとの惜別をしたという夫婦は、上野のパンダの動画を見せてくれた。

 平日の台北動物園パンダ舎は、参観者もまばらで、行列はもちろん、時間制限もなく、パンダの生態をじっくり見学できる。運がよければ、3匹とも出てきての食事風景や活動を目にすることもできる。

 ちなみに、台北動物園の入場料は100元(約500円)と安価だが、マカオのパンダ施設は無料で開放されているという。今後は「パンダツアー」を目的とした観光需要もあるのではないかと思われる。

 次に日本へパンダが貸与される日を待ちつつ、当面は「海外でパンダ見物」を楽しんでみてはいかがだろうか?

広橋賢蔵(ひろはし・けんぞう)
台湾在住ライター。1965年生、1988年北京留学後、1989年に台湾に渡り「なーるほどザ台湾」「台北ナビ」編集担当を経て、現在は台湾観光案内ブログ「歩く台北」主宰。近著に『台湾の秘湯迷走旅』(双葉文庫)などがある。

デイリー新潮編集部

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