日本人が知らない「日本で一番パンダが多い場所」 一度に「7頭のパンダ」に会える!

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 2023年2月に、お父さんパンダの永明(えいめい)、その子どものメスの双子・桜浜(おうひん)と桃浜(とうひん)が中国へ旅立つことを発表した、和歌山県白浜町にあるテーマパーク「アドベンチャーワールド」。実は、一か所で7頭ものパンダに会える貴重な場所なのだ。

 ファミリーを築いた永明(16頭の子のお父さん!)については「(1)もうすぐお別れ!」で紹介した。

10頭を育てたベテランお母さん・良浜

 良浜の10番目の子ども、2020年11月22日に生まれた楓浜(ふうひん)は、2022年4月にひとり立ちし、お母さんと一緒に暮らしていたブリーディングセンターからパンダラブに引っ越ししました。

 良浜は現在22歳、人間でいうと還暦ぐらいでしょうか。10頭を産んで育て上げたのですから、それはもうベテランのお母さんです。スタッフは何度経験しても出産や赤ちゃんのお世話には常に緊張するものですが、経験を積んだ良浜なので安心して見ていられる面もあります。

 そんな良浜は、子どもの遊び相手をとてもよくします。子どもが「遊んで」と行くより先に遊びをしかける感じです。それも、子どもと同じくらいの無邪気さで、見ていて「大丈夫?」と思うくらい大はしゃぎで激しい。力強く噛み合ったり、時にはパンチもしたり。でもこうした遊びは、どのくらいの力加減だとどのくらい痛いかを子どもが覚えるうえでも大切です。

 良浜はこれまで、ほぼ2年おきに出産をしています。永明との相性がとてもよいことが子だくさんの一番の理由です。

 生まれた子どもとは、野生のパンダと同じように1歳から遅くても2歳までに親離れ・子離れをします。その後、順調に発情期がきたら交配、となるのですが、スタッフの側も、妊娠しやすいようにお手伝いをすることがあります。

 ひとつにはダイエット。

 パンダによって違いますが、良浜の場合、これまでの記録から104キロぐらいが妊娠のためのベスト体重と考えています。そこで発情期が近くなってきて110キロを超えているとダイエット開始です。

 ダイエットといえども、大切な主食である竹を減らすことはありません。おやつとして与えている高カロリーの動物用ビスケットなどを控えめにしていきます。2週間に1度、体重測定をしていますが、おやつを減らすと徐々にですが着実に減ります。主食は普通に、間食を減らす――パンダのダイエットも人間と一緒です(誘惑に負けやすい人間はなかなか思うようにやせられませんが)。

 最初の双子、梅浜(めいひん)・永浜(えいひん)の時は赤ちゃんの扱いもおぼつかなかった良浜も、こうして出産を重ねるにつれてどんどんお母さんらしくなり、子育てに慣れていく感じが見ていてわかります。

 パンダのお母さんはとても神経質になりやすいものですが、9番目の彩浜(さいひん)や10番目の楓浜のころには、スタッフを信頼して赤ちゃんを預けてくれることがわかりました。小さなことに動じない肝っ玉母さんぶりが板についています。

白浜で会える娘たち

 アドベンチャーワールドで誕生したパンダの場合、オスはお父さんに似て、メスはお母さんに似る、という傾向があるように思います。特に男の子のほうが成長するほど、鼻が長めにしゅっとして永明に似てきます。

 現在、パークで暮らす子どもはすべてメスですが、結浜(ゆいひん)は珍しく永明に似て鼻が少し長めです。お母さんの良浜に一番似ているのは桜浜だと思います――真ん丸な顔、大きな真ん丸な耳です。楓浜のアイパッチがアイラインみたいにピンとはねているんですが、永明もよく見ると目じりがはねぎみなことに最近、気がつきました。思いおこせば梅梅(めいめい=良浜の母 2008年没)もはねていましたから、おばあちゃんに似た可能性もあります。

 永明は後肢の甲の部分に白いところがあって、良浜はかかとに白い毛があります。これも遺伝して同じところが白くなるパンダもいますが、大きくなると黒い毛で隠れてしまう場合もあります。

 永明は竹のえり好みが激しいのですが、それを受けついでいるのは桃浜と結浜です。あまりうるさくなく、どんな竹でもモリモリ食べてくれる良浜に傾向が似ているのが桜浜。彩浜は季節や気分によって変わる、という感じでしょうか。

 アドベンチャーワールドで会える5頭の姉妹の性格について、もう少しお話ししましょう(年齢は2022年12月現在です)。

桜浜 8歳(桃浜と双子)

 おとなしくて、臆病なところがあります。パンダは全般に臆病ではあるのですが、ちょっとした物音でびっくりして、腰かけていたところからころっと落っこちちゃったり。マイペースでのんびりです。

桃浜 8歳(桜浜と双子)

 双子姉妹の桜浜に比べると、どっしり構えたところがあります。小さいころから活発で、何にでも興味を示してとりあえず近づいてみよう、触ってみようと好奇心旺盛なタイプでした。

結浜 6歳

 特に食べ物に関して、偏食というか、ほかの子は喜んで食べるものでも結浜だけ食べない。おいしそうに食べた種類の竹も、次にあげると食べないえり好みぶりは、ちょっと永明に似ています。小さいころも、離乳食として普通はリンゴをあげるのですが結浜は見向きもせず、タケノコをあげたらむしゃむしゃ食べていました。

 ほかにも産地や種類がいつもと違うニンジンはだめ、リンゴも赤いのはいいけど青いのはだめ、と「え!? そこですか?」と思うような「こだわり」があって、本当に不思議ちゃんです。

彩浜 4歳

 人が大好きです。まだ幼さが残っているせいもあると思うのですが、柵越しで、名前を呼ばなくても自分から近寄ってきたり、後を追ってきたり……。

 また、運動場の遊具のやぐらの上で、でんと座ってゲストを眺めている定番スタイルが人気です。

楓浜 2歳

 おとなしくて、ほかのパンダたちに比べると落ちついている感じです。部屋の移動では、遊びたい盛りの子どものパンダはまっすぐ歩かず柵があれば登ろうとしたり、逆のほうに戻ってしまったりなかなか言うことを聞いてくれないものです。でも楓浜は、リンゴをあげて気を引きながら「こっちに行くんだよ」と一度教えると、次からはスススッと自分で動いてくれます。

 今後、ハズバンダリー・トレーニング(受診動作訓練)といって、採血や身体測定など健康管理をするうえで必要な動作を覚えてもらうトレーニングを行う予定ですが、すぐ覚えられるのではないかと今から期待しています。

『知らなかった! パンダ―アドベンチャーワールドが29年で20頭を育てたから知っているひみつ―』より一部を抜粋、再編集。

デイリー新潮編集部

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