軽度認知症を公表した89歳の名優「山本學」が語る「老いを生ききる」ことの意義 「いまの僕は“人生の幕を下ろす”ことを考えながら日常を生きています」

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 第1回【「山本さんは来年もセリフを覚えられるのか」の声にショックも…名優「山本學」と専門医「朝田隆」が語る“認知症患者の現実”】からの続き──。俳優・山本學氏(89)の名前を聞けば、1978年にフジテレビで放送されたドラマ「白い巨塔」を思い出す人は多いだろう。名誉や金銭より患者の治療を重視し、倫理と信念を貫く医師・里見脩二を山本氏は演じ、視聴者に鮮烈な印象を与えた。(全2回の第2回)

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 近年では2018年にTBSで放送された「下町ロケット」を300年続く米農家の12代目・殿村正弘役で支え、ベテランらしい味のある演技を披露したのも記憶に新しい。

 そんな山本氏は軽度認知障害と診断され、認知症専門医の第一人者として知られる朝田隆氏(70)が山本氏の主治医となった。その縁から二人が“老い”について語り尽くす機会が生まれ、対談集『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』(アスコム)として一冊の書籍にまとまった。

 デイリー新潮では、山本氏と朝田氏に「老いても、最期まで生ききる」人生をテーマに対談をお願いした──。

山本學(以下、山本):1月3日で89歳になりました。だから今までできていたことも、できなくなります。一番驚いたのは跳躍ができないことですね。ジャンプができない。正確に言えば、努力すると少しはできるのです。でも昔は身体を鍛えるために縄跳びをしていましたが、今はできないね。70代ではできても、80代になるとできない。あと僕は数年前に寝室の白壁に奇妙な図形が映ることに気づいたのですが、これは大きかった。

老化と認知症は別の問題

──この図形のエピソードは対談集『老いを生ききる』にも登場する。幻視の一種で、医学的には軽度の認知障害の症例として分類される。

山本:この幻視で朝田先生との縁が生まれたわけですが、僕の友達も80代になると幻視が始まったと言っていました。テレビを見ていると、視界の片隅に見知らぬ男が立っている。でもいるはずはない。友達は深く気にせず日常生活を送っているのです。本当に80代になって初めて知ることはたくさんありますね。

朝田隆(以下、朝田):人間が90年、100年生きられるかもしれない時代になってきた。かつての常識では考えられないほど長寿の人間が増えてきた状態に、今の医学は充分に対応できているとは言えません。

山本:著作の中でも先生と話をしましたが、年を取ると身体のあちこちが悪くなる。五感の質が落ちていく。耳から悪くなる人、目から悪くなる人、それぞれ違います。そして私たち高齢者にとって老化と認知症の問題は完全に別なのです。ところが、どうも今の報道や政府の施策を見ていると、老化と認知症を一緒くたにしているのではないかという気がします。

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