特に「月曜日の朝」が危険… 冬に悪化する糖尿病の対策方法 「ちょっと血糖値が高い」は「すでに糖尿病が始まっている」と捉えるべき

ドクター新潮 ライフ

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画期的な薬が

 運動も続けられるようにハードルを下げましょう。1日4000歩の人は5000歩に伸ばすだけでも違います。食事や運動で頑張れないところは薬を上手に活用する方が近道です。特に、悪玉コレステロール値を食事のみで下げることはほぼ不可能と考えられていて、スタチン製剤という薬剤が使用されます。

「薬には頼りたくない」と言われる患者さんは多いですが、糖尿病領域の血糖コントロールで私がお勧めするのは画期的な薬が開発されたからです。

 その一つが「GLP-1受容体作動薬」です。GLP-1は小腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を助け、血糖値を上げるホルモンの分泌を抑えます。この薬は、血糖値を下げるだけでなく、体重を減らす効果もあることから世界的に広がりましたが、心臓や腎臓疾患の死亡リスクを下げることも研究で示されており、日本でも糖尿病治療薬として、さらには肥満症治療薬としても使われるようになりました。

 もう一つの「SGLT2阻害薬」は、余分な糖を尿に流して血糖値を下げる薬です。糖尿病の人に投与したところ、心不全や腎不全の発症や悪化が大幅に減ったという効果がありました。この薬は、利尿作用や血圧を下げる効果を併せ持つ場合もあり、結果として心臓・腎臓を守るとされています。

「薬は副作用が怖い」という患者さんも多くおられますが、専門医による適切な説明とフォローの下で使う限り、安全性は非常に高いものです。特に最近の新薬は従来の薬よりも副作用が少なくなるよう設計されています。薬を飲むことを恐れるより、病気を放置することの方がはるかに危険といえます。

病院を選ぶのに迷ったら

 日本では薬が敬遠されがちな一方で、サプリメントが人気です。しかし、「血糖値を下げる」「血圧を下げる」という効果があるものは「薬」に分類されており、サプリメントに効果は期待できません。ビタミン、ミネラルなど栄養不足を補う目的なら意味があるかもしれませんが、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病を防ぐ、または改善するという目的では、サプリメントは回り道です。

 近年、「自由診療」「先進医療」「再生医療」という言葉がよく聞かれます。糖尿病でも「幹細胞治療で治る」といった誇大広告が出回り、それを自費診療で行うクリニックが少なくありません。これらは副作用を含めすべて自己責任となります。

 しかも、自費診療で提供されるものの多くは、日本では十分な根拠が整っていない段階の治療や、海外で一部報告があるだけの薬です。要するに、「効くかもしれないけど、確証はない」のが自費診療なのです。効果が表れなくても副作用が出ても、患者さんの全額負担で、結果責任もご自身が負うことになりますから、お勧めはできません。

 また病院を選ぶのに迷ったら、学会や公的機関が認定した専門医や教育認定施設(適切な教育体制などを備えると学会が認めた医療機関)を選ぶべきです。糖尿病では「日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医」と掲げています。

 専門医は、一定期間の専門研修や試験を経て得られる資格です。指導医は専門医を養成する医師でもあり、最新の知識と豊かな診療経験を持っています。さらに「教育施設」「研究施設」として学会に認定されている病院なら、専門医が在籍し、チーム診療の体制が整っているので安心です。大学病院でなくても認定を受けている医院はいくつもあります。

 こうした専門医がいる病院は、ネットで「糖尿病専門医」と検索すればすぐに出てきます。普段のかかりつけのお医者さんに相談して、紹介状を書いてもらえばいいと思います。

 糖尿病といえば、自覚症状がないこともあるので軽視されがちです。また、「尿」が付いたネーミングになんとなく感じる恥ずかしさ、自堕落な生活をしていたように思われるのではないかという意識が、受診のハードルを高くしているようです。

 しかし、糖尿病の本質は高血糖症であって、それは食生活に起因するだけでなく、ストレスも原因として大いに関係しており、この時代には長生きする間のどこかで、誰もがかかる可能性が高い疾患群の一つと考えてください。

 糖尿病は「サイレントキラー」と言われ、突然心筋梗塞などの大きな病気を引き起こすこともある病気です。ご自分だけではなく、親御さんや子どもさんに対しても、どんなに目を配っても配り過ぎることはないと思います。重ねて申し上げますが糖尿病は、診断された時にはもうすでに戻れない状況になっている病気ですので、この機会に是非、意識していただきたいと思います。

坂本昌也(さかもとまさや)
国際医療福祉大学医学部教授。国際医療福祉大学三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科部長。東京慈恵会医科大学医学部卒。日本糖尿病学会認定指導医・糖尿病専門医。近著に『糖尿病改善の最新ルール』(あさ出版)。

週刊新潮 2026年1月15日号掲載

特別読物「特に月曜の朝は危ない――冬場に悪化する『糖尿病』対策」より

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