別れ際に「リスカ写真」を送り付けてきた元カノと同窓会で再会 変わらぬ美貌、20年ぶりの会話は盛り上がるも…【川奈まり子の百物語】
父の願い
浩一さんは、ホラー映画「リング」の主人公・貞子の母のモデルになったと言われる実在した超能力者・御船千鶴子について本で読んだことがあった。
御船千鶴子は生まれつき右耳が難聴だった。
美紀も、左耳に軽度の難聴を持っていた。御船千鶴子は若くして自死し、美紀は病死したという違いはある。
だが、浩一さんには、早すぎる彼女らの死が特別な能力の代償だったような気がしてならなかったのであった。
この考えは、娘のあやめが成長するに伴って、彼を不安で苛んだ。
あやめは片言で話しはじめた頃から、毎日のように奇妙なことを口にした。
「お庭に白いおばさんがいるよ」「お風呂で誰かが歌ってる」
白いおばさんは浩一さんに見えず、浴室の歌声も聞こえなかった。
しかし、あやめには視えるし聞こえるに違いなかった。
あやめは生まれながらに母親ゆずりの霊感を持っているのだと思われた。美紀はそれを予想して「あの子の言うことを信じてあげてね」と彼に遺言したのだ。
――あやめには、このまま何事もなく良い人生を送ってほしい。
彼はそう願うばかりであった。
幸いあやめは難聴ではなく、すくすくと育っていった。
元カノ
昨年5月、浩一さんは大学の同窓会に約10年ぶりに出席した。
結婚以降、何かと身辺が落ち着かず、彼は毎年送られてくる同窓会のハガキを無視していたが、近頃、そろそろ自分の楽しみのために時間を使ってもいいような気がしてきていた。幸いまだ両親には健康上の心配はなく、あやめも手が掛からなくなってきたことだし……。
しかも、今回の同窓会の会場は横浜市内で、家から近かった。
参加を決めて、あやめの満8歳の誕生日が一週間後に迫る土曜日の夕方、会場の横浜港を臨むホテルの広間に行き、懐かしい面々と旧交を温め合った。
彼が妻を亡くしたことを知る者も何人かいたが、誰もが自然な態度で接してくれた。
元恋人のユミから声を掛けられたときは緊張したが……。
「浩一くん、久しぶり!」
ユミとは在学中におよそ2年間交際した。だいたい20年前ということになる。
長い黒髪、細身の体型、華やかな笑顔。ユミは驚くほど外見が変わっていなかった。
「元気そうで良かった。全然顔を見せないんだもの……。さっき小耳に挟んだんだけど、独りで娘さんを育てているんですって?」
浩一さんが簡単に自分の状況を話すと、ユミは殊勝そうな顔つきになった。
「私なんて、浩一くんに比べたら、たいしたことないね……。それなりに苦労したつもりだったけど、バツイチなだけで、子どもはいないし……」
「そうなんだ。離婚したんだね」
「ええ。結婚式に呼ばなくて御免ね。さすがに元カレを招待するのは、ちょっとね」
「それはお互い様じゃないか」
「そうだね。私も浩一くんのこと知らなかったし。どこに住んでるの?」
「横浜。娘のことがあるから親の家に戻ったんだ」
「そうなの? 私も今は横浜にいるのよ」
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