イジメ動画は「大衆の最大の娯楽」 拡散に加担すれば法的な責任を負うリスクも
新年早々、SNSを席巻したのは、栃木県立高校の男子トイレで振るわれた、おぞましい暴力を収めた動画だった。しかし、瞬く間に拡散されたこの動画を巡り、今度は加害者生徒の名前や自宅住所がさらされる事態に。ゆがんだ正義を暴走させるネット民の病理をえぐる。
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【写真を見る】無抵抗の生徒に顔面ストレートを… 衝撃動画を拡散した「暴露系アカウント」の“中の人”
昨年12月に撮影された動画では、明らかに無抵抗の男子生徒に対し、悪ガキとおぼしき生徒が一方的に殴る、蹴るの暴力を加えている。栃木県警は捜査に着手し、加害者生徒に事情聴取を行った。
県教育委員会の担当者によれば、
「1月4日の夜、たまたま職員が動画を見つけました。翌日には学校に連絡を入れ、6日、学校から動画の内容は事実であると報告を受けました」
舞台となった県立高校の担当者が後を継ぐ。
「動画が拡散されてから200件近く電話がかかってきました。大半は学校に対して“しっかりしてください”という厳しいご意見です」
不幸中の幸いというべきか、動画が拡散されたのは冬休み中だった。
「一部のユーチューバーが学校周辺に来ていたようですが、一般生徒の物理的な被害は把握していません。始業式のあった8日には、教諭や職員で周辺の見回りもしました」(同)
なぜユーチューバーが現れたのかといえば、
「加害者の名前や自宅住所、さらには家族の名前までネット上に拡散されたからです。“みんなでこの家にピザを送ってやりましょう”“こいつの人生を終わらせたい”“無事人生終了”などのコメントがSNSに溢れました」(社会部記者)
加えて現代特有のアクシデントも勃発し、
「ヤフージャパンでは生成AIによる“要約”として、加害者の名前が表示される事態も発生した」(同)
そもそもこの動画を最初に投稿したのは、さる暴露系インフルエンサーである。
「もともとアイドルの不祥事などを暴露するアカウントでしたが、今年に入り〈いじめ撲滅委員会〉の“設立”を宣言。迷惑系ユーチューバーから奈良市議になった、へずまりゅうと組んで活動するとも発表しています」(同)
この件を皮切りに、SNSでの拡散はエスカレート。
「続けざまに大分県、福井県、福岡県などの中学校や高校で撮影された暴力動画がSNS上に投稿され、個人情報ともども拡散されました。中にはすでに当事者間で解決済みの件も含まれていた」(同)
プライバシーの侵害
未成年者に対する、異様というべきSNSでの誹謗中傷。一体、何がネット民たちを突き動かしているのだろうか。まさか、SNSでの誹謗中傷により自ら命を絶った、プロレスラーの木村花さんを忘れたわけではあるまい。
木村さん遺族の代理人を務めた清水陽平弁護士が言う。
「法的に問題があり得る投稿をしたり、その投稿を拡散させたりする人の多くは、違法の可能性を考慮しません。そして“自分の意見を述べただけだ”とよく口にします。今回の件でいえば、暴行がよくないのは大前提ですが、寄ってたかって個人に石を投げている。これはまさにいじめの構造です。そのことに投稿者たちは気付いていないのでしょう」
住所などの個人情報をさらすことは、
「プライバシーの侵害に該当する可能性が高いです」
そう解説するのは、ネット問題に詳しい浦川祐輔弁護士だ。
「このような開示請求であれば、発信者は男性が多い。実生活ではあまり恵まれていない方が多い印象を受けます」(同)
誹謗中傷による損害賠償請求額の相場は、
「慰謝料自体は15万~30万円ほど。しかし自分が頼む弁護士費用に加え、裁判に負けた場合は、相手の開示請求などの弁護士費用も負担しなければなりません。計100万円くらいかかることも少なくありません」(同)
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