実は日本が「最大の被害者」… 異常気象で日本はどう変わる? 「桜が咲かない地域が出てくる」「国力が損なわれる」

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「ブランド米信仰」

 このように、異常気象は日本の国力を奪い、私たちの生活を大きく左右しかねないファクターなのです。

 そして国連のグテーレス事務総長が「人類は地獄の門を開けてしまった」と評したように、このまま何も手を打てなければ「異常気象」は「通常気象」になってしまいます。すでに世界は「アナザーワールドの入り口」に立っているというのが私の認識です。

 こうした現状に伴い、甲子園での夏の高校野球の開催が「昼間」を除いた「朝と夕方」に行われることになったように、必然的に私たちには異常気象に対応した生活スタイルが求められるはずです。

 例えば、日本はいま世界標準時刻よりも9時間先行した標準時を採用していますが、それを2時間早める。「現在の午前9時」は、夏であればすでに外で作業するのは厳しい暑さですが、「新しい午前9時=現在の午前7時」であれば、まだ作業しやすくなるでしょう。無論、実施するにはさまざまなハードルがあるでしょうが、アナザーワールドに突入しつつあるいま、それくらいの「覚悟」が必要とされていると、私は考えています。

 また、「ブランド米信仰」も考え直す必要があるかもしれません。人気のコシヒカリは実は暑さに弱く、近年、生産の質量ともに低下しています。しかし、消費者がコシヒカリを求めるので、農家としてもコシヒカリ作りをやめるわけにはいかない。暑さに強い品種改良を進め、それを促すためにも、「ブランド米以外の米」に対する認識を改めることも視野に入れるべきなのではないかと思います。

「夏祭り」などのイベント開催時期も変更を検討する必要があるのではないでしょうか。猛暑の中、ギラギラと輝く太陽の下でみこしを担ぐなどというのは、いまの尋常ならざる暑さでは“自殺行為”になりかねません。もともと、祭りの開催時期は、「日付け」よりも「季節感」を由来にしていにしえの人が決めた場合も少なくないはずですから、むしろ、いまの気象条件に合わせて開催時期をずらすのは理にかなっているともいえるのではないでしょうか。

他人事ではない

 温暖化の主原因とされる二酸化炭素の排出量を減らすためには、「車社会」も検討の余地があるでしょう。群馬県が行った調査では、100メートル未満の移動でも車を使うと答えた人が26%もいました。「車の無駄使い」には要注意です。

 そんな対策をしたところで、日本だけがやっても弥縫(びほう)策にしかならない。そうした声が聞こえてきそうです。しかし、異常気象への「気付き」や意識改革を世界に向けて迫る意味でも、日本が率先してやれることからやるべきです。

 なぜなら、繰り返しになりますが、異常気象の影響を最も受けるのは他ならぬ日本なのです。異常気象は「沈みゆく熱帯の島国の他人事」ではなく、「宿命を背負った日本列島のわが事」。このままでは、いずれ日本は暑過ぎる上にドカ雪が降る、「世界で最も住みにくい国」になりかねないのです。

 こうしているいまも、日本のどこかでドカ雪が降っているかもしれません。

立花義裕(たちばなよしひろ)
三重大学大学院教授。1961年生まれ。北海道大学大学院理学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。気象学、異常気象、気候力学が専門。日本気象学会理事、日本雪氷学会理事。北大低温科学研究所、ワシントン大学などを経て現職に。『異常気象の未来予測』(ポプラ新書)の著書がある。

週刊新潮 2026年1月15日号掲載

特別読物「実は日本が“最大の被害者”… 異常気象で『生活スタイル』見直しのススメ」より

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