「クルマを追跡され窓ガラスをドンドン叩かれて……」 「クルド人問題」対処を訴える議員たちの記者会見で明かされた意外な結末
「川口市内の視察中にクルド人にクルマを追跡され、威嚇された」――そんな被害を訴え、刑事告訴をしていた地元議員らが年明け早々、記者会見をした。
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会見では「刑事告訴を受け、警察は書類送検したものの、検察の出した結論は不起訴だった」という結果が報告された。
議員らが会見の場で語った不満とは? 『おどろきの「クルド人問題」』などの著書があるライター、石神賢介氏のレポートである。
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「クルド人問題」に関する二つの立場
埼玉県川口市の「クルド人問題」については、以下が「一般的な理解」である。
――2010年代くらいからトルコやシリアの山岳民族、クルド人が埼玉県川口市内でさまざまな事件やトラブルを起こしてきた。病院前での100人規模の暴動や日本人の未成年女子への性的暴行、無免許ひき逃げ等。そんな彼らの住居やヤード(クルド人経営の解体業者場の廃材置き場)が周辺の自治体にも広がっている。犯罪ではないが、迷惑行為を何とかしてほしいといった声も市民からは多く聞かれる――。
ここでなぜ筆者が「クルド人問題」とカギかっこ付きで書いて、なおかつ「一般的な理解」という表現にしたかといえば、そもそもこの「問題」の存在を認めない人も一定数いるからだ。そうした人の意見は、以下のようなものである。
――迷惑行為や犯罪と国籍や民族を結びつけるのは「ヘイト」「差別」だ。日本人でも迷惑な奴もいれば、犯罪者もいる。クルド人のみピックアップして論じるのは、排外主義、差別主義だ――。
この主張をしている代表格は、市民団体の一部や東京新聞、朝日新聞などいわゆる左派メディアだろう。差別やヘイトは排していくべきなのは同感だ。というか、それに正面から反対する人はあまりいないと思う。
一方で、こうした意見がどこまで市民の感覚と合致しているのかには、いささか疑問も残る。筆者は2024年から、川口市内のウィークリーマンションに滞在して市民目線で市内を取材してきた。
その間、コンビニの駐車場でのオシッコなどの迷惑行為は頻繁に目にした。過積載かそれに近いトラックが乱暴な運転をしているのも日常的に目撃した。この取材については拙著『おどろきの「クルド人問題」』で詳しく書いている。
たしかに日本人にも犯罪や迷惑行為をする人は後を絶たないのだけれど、筆者が普段住む都内ではめったに見かけない光景(オシッコやら過積載トラックやら)をしばしば目撃したのは事実である。また、病院の前での暴動、などという事件は全国的にも珍しいのではと思う。
クルマのドアをドンドンと
埼玉県内の市議たちの視察に同行したこともある。彼らの自治体にクルド人が目立つようになってきたので、対策を講じる必要を感じているという。
そんな視察を巡るトラブルが発生したのは2025年6月2日のこと。
この日、埼玉県や川口市の地方議員有志による「外国人共生・地域課題に関する視察」が行われた。議員たちはワンボックスカーに同乗し、ヤードが集まる市内の赤芝新田で公道から視察。議員たちによれば、その際数人のクルド人が集まり、ドンドンとクルマの窓を叩くなど威嚇行為を行ったという。
議員たちの説明では、その後以下のような展開になったという。彼らはすぐにその場を離れたが、クルド人たちは3台のクルマに分乗し約7キロにわたって追跡。恐怖を感じた議員たちは110番通報をした上で、市内の武南警察署の駐車場に避難。日本人女性1人を含む4人が乗るクルマが追いつき、議員車をクルマで囲んでさらに威嚇行為を続けた。彼らは車内にいる、クルド人が多く住むエリアに自宅がある川口市議会の奥富精一議員の名前を叫び、中指を立てて侮蔑した。
この件に関して、視察に参加していた埼玉県議会の高木功介議員と奥富市議は、連名でクルド人関係者たちを刑事告訴した。同7月1日に衆議院第二議員会館で行った記者会見で、高木県議は次のように語った。
「クルド人に対して泣き寝入りを強いられてきた多くの人々の代弁者として刑事告訴に踏み切りました」
それから半年ほど経った今年1月8日、高木県議、そして奥富市議、さらに別行程でヤードを視察したという諸井真英埼玉県議会議員の3人が衆議院第一議員会館で記者会見を行った。
高木県議が会見を告知したXのポストには「令和7年6月2日、埼玉県川口市内で発生した『クルド人関係者による地方議員襲撃事案』について、検察による重大な判断が示されました」とあり、筆者は議員側にとって好ましい結果を勝ち取ったのだと想像して出かけて行った。
しかし会見に訪れると、意外にもまったく反対の報告が行われた。2025年12月24日、この事件に関し、威力業務妨害と監禁罪で書類送検されていたクルド人ら3人について検察は不起訴処分(嫌疑不十分)という判断を下したという。
会見で高木県議は、検察の説明についてこう述べた。
「この判断は“不起訴=問題がなかった”という意味ではなく、現行法上、本件のような行為を正面から処罰する構成要件が存在しないという法的限界に基づくものと説明を受けています」
窓ガラスをドンドン叩き、長距離にわたって追尾するといった行為は威力業務妨害や監禁罪にはあたらない、ということだろうか。
「殴られた動画があれば証拠になるけれど、というふうなことも言われました」
とは奥富市議。
それはそうだろうが、議員たちにとって納得のいく説明ではなかろう。
「今回のような行為が議員を対象としても起訴に至らないのであれば、一般市民が同様に追い回され、威迫された場合にも、十分に処罰されないケースが生じうる可能性があります」(高木県議)
この高木県議の説明で、筆者の脳裏にはあるシーンがよみがえった。拙著にも記しているが、2024年秋に川口市内で取材を重ねていた夜のことだ。市内伊刈のコンビニの駐車場で取材をしていたとき、そこに明らかに過積載のトラックが停まっていた。積み荷は左右から落ちそうになっている。危険だと判断した。
筆者がその荷台を撮影すると、背後にいた外国人に中東らしき言葉で怒鳴られた。報道目的ではあるので正当性はあると思ったものの言葉が通じなさそうなうえ、ちょっと身の危険も感じたので、深々と頭を下げ、手を合わせて謝り、クルマでその場を去った。
しかし運転しながらふとバックミラーを見ると、先ほどのトラックが背後に迫っていた。車間距離はほとんどない。いわゆる“ケツピタ”という煽り運転だ。時計の針は夜9時をまわっていた。このあたりは街灯が少なくて暗い。怖くなり、スピードを上げる。トラックは追ってくる。右折すると、トラックも右折。左折すると、またついてきた。こちらが小型車だったことが幸いし、狭い路地に入り逃げ切った。
こんな経験があったので、議員たちの訴えは他人事と思えなかった。
その記者会見では、議員たちを取り囲んだのが在留資格を持つクルド人だったのか、在留資格を持たないクルド人だったのか、あるいは仮放免だったのかという点が気になった。
会見で挙手し確認すると、議員車を取り囲んだクルド人たちの在留資格の有無はわからなかったそうだ。仮放免の外国人は許可書の携帯が義務付けられているが、提示しない人が多いらしい。
ことクルド人に関しては、言葉の壁によって調書がつくれないケースも多発している。トラブルの現場で、日本人警察官はクルド語が理解できない。一方クルド人も日本語が理解できないことが珍しくない。英語や中国語と違い通訳も圧倒的に不足している。検察の言う「法的限界」には、こうした現状も含んでいるのだろうか。
不起訴処分に納得がいかない議員たちは、検察審査会に審査を申し立てたというので、その展開も注目したいところである。
なぜか「市民の安心」を軽視する大新聞
2026年1月9日付の「朝日新聞」朝刊によると、2025年の川口市の意識調査で「市の良くないところ・嫌いなところ」を聞くと、過去最多の54・1%が「治安が悪い」と回答したという。市民の半数以上が不安を抱えて生活していることになる。
この記事の主旨は、「在日クルド人に問題がないわけではないが、X上のデマなどによって不安が増幅されている面も多々ある。きちんとしたデータに基づいた冷静な認識を持つことで共生の道を探らねばならない」というものだ。
それは正論なのだろう。
ただ、これまであらゆる分野で「科学的データに基づく“安全”が大事なのは当然だが、市民の“安心”を求める感情を軽視してはならない」と日ごろ繰り返してきたのもまた、こうした新聞などのマスコミだったのではないか、という気がする。
ところがこの問題に関しては、“安心”を求める声に対して、いつもよりも冷ややかに見える場面が少なくない。
一部メディアのそうした姿勢が余計に、Xなどでの情報拡散を促し、結果として分断を深めているという面はないだろうか。










