なぜ容疑者は“バーの壁”に女性看護師(28)の遺体を隠したのか? 犯罪心理学者が“猟奇的”でも“用意周到”でもなく「よくいるタイプの犯人像」と断じる理由

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 経営するバーの壁に、女性看護師の遺体を隠していた男──。報道を知って驚いた人も多かったに違いない。北海道日高町のバーから女性の遺体が発見され、北海道警は経営者の松倉俊彦容疑者を死体遺棄の疑いで逮捕した。被害者は28歳の看護師で、バーに設置されていたダーツの横にある物置スペースで発見された。看護師は衣服を着ており、死因は窒息死。松倉容疑者は物置スペースをベニヤ板で塞いで“隠蔽”を図っていた。

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 担当記者は「逮捕時、松倉容疑者は49歳でした。そして看護師の女性はバーの常連客だったことが分かっています」と言う。

「女性は殺害される前、周囲に『大晦日は彼氏と過ごす』と話していたことも道警は把握しています。死体を遺棄したのは大晦日の可能性が高く、道警は看護師の言っていた“彼氏”が松倉容疑者なのかどうか、殺人容疑も視野に入れて捜査を進めています。松倉容疑者は1月2日には店を開けており、一部の地元メディアは関係者を取材し、2日の店内では4、5台の空気清浄機が動いていたと伝えています。遺体の腐敗臭を隠そうとしていた可能性があります」

 SNSのXを見ると「壁から遺体が見つかるなんて信じられない」という声が圧倒的に多い。さらに事件に対して猟奇的な印象を持ったという感想も目立つ。

 一体全体、松倉容疑者は何のために壁に遺体を隠したのか、どういう心理状態だったのか──と首を傾げる方も少なくないだろう。そこで犯罪心理学者で東京未来大学副学長の出口保行教授に取材を依頼した。

事件を解く鍵は「絞殺」

「この殺人事件を『容疑者は被害者の遺体をわざと店内の壁に隠し、何食わぬ顔をして店を開け、客との応対を楽しんでいた』と解釈すれば、確かに猟奇的な印象が強くなります。しかし犯罪心理学の基本に立ち返って分析すると、むしろ逆の可能性が高まるのではないでしょうか。そもそも殺人事件においては、加害者と被害者の間に面識がある割合は90%を超えます。つまり多くの殺人では加害者と被害者の間に濃密な人間関係が存在し、そこで生じたトラブルを一気に解消するために行われるのです。強盗殺人であれば、加害者が面識のない被害者を殺めるケースもありますが、それと殺人事件は異なるのです」(出口教授)

 被害者の女性看護師はバーの常連客だったことが分かっている。さらにふたりがより深い関係だったのかという点についても道警が捜査している。

「今回の事件で私が注目したいのは、複数のメディアが『ロープのようなもので首を絞めた』と報じていることです。日本では加害者が事前に計画を練って殺人に及んだ場合、凶器として刃物が使われる傾向があります。一方、素手やロープで首を絞めて殺害した場合は突発的な事件であることが多いのです。感情の行き違いから、容疑者が突発的に被害者を殺してしまったとしましょう。濃密な人間関係が存在するので、我に返った容疑者の多くはパニック状態に陥ります。計画性がないので、遺体の処理にも困り果てます」(同・出口教授)

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