4200万円入りのジュラルミントランクが消えた…昭和の“銀行事件”はなぜ未解決が多いのか ベテラン刑事も漏らした「後味の悪さ」

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思い出される昭和の“銀行犯罪”

 銀行に預けられた金品を行員が盗む――。2024年に発覚した三菱UFJ銀行の貸金庫窃盗事件をめぐり、同行の元行員・山崎由香理被告(47、当時は今村姓)が逮捕されたのは2025年1月14日のことだった。

 同年10月6日に東京地裁が下した判決によると、山崎被告は2023年3月から2024年10月の間、同行練馬支店と玉川支店の貸金庫から現金約6000万円と金塊29個(約3億3000万円相当)を盗んだ。量刑は懲役9年(求刑12年)。山崎被告側が控訴したこともあり、世間の関心が衰える気配はなさそうだ。

 一方、他行でも窃盗事案が報告されるなど、2025年は銀行業界の信頼が揺らいだ年でもあった。そこで既視感を覚えた方も多かっただろう。実のところ金融機関から現金などが“消える”事件は、昭和の頃から多数発生していた。他にも銀行強盗や現金輸送車強奪など、巨額のカネをめぐる事件が“身近”だった時代である。

 令和の時代に発生した三菱UFJ銀行の貸金庫窃盗は、同行が率先して調査し、公表に至った。だが、かつて多数の銀行で現金が消えていた頃は、未解決となることも珍しくなかったという。そんな驚きの時代とその背景を、当時の「週刊新潮」で覗いてみよう。

(全2回の第1回:以下、「週刊新潮」1984年1月19日号「銀行『現金盗難事件』がすべて『時効』になる『行内雰囲気』」を再編集しました。文中の肩書き、年齢等は掲載当時のものです)

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“銀行犯罪”の捜査はむずかしい

 例えば、過去5年間(1979~83年)に遡って銀行、郵便局などで500万円以上の現金や小切手が蒸発した事件を見ると20件に近い。しかし、このうちの8割以上が未解決のままなのだ。

 従って、〈A信用組合B支店〉の事件のように犯人がたちまち御用となるケースは本当に珍しい。この事件は、昨年の大晦日の晩に起きている。同信組の職員の1人がかねて用意の合カギで忍び込み、現金と小切手合わせて6800万円を失敬したというものだが、捜査関係者の1人は、

「犯人に任意同行を求めた際、終始、ブルブル体を震わせていてね。彼があまりに小心だったためにスピード逮捕できた。彼がシタタカだったら、かなり捜査は難航したかもしれない」

 というのである。

 それほど“銀行犯罪”の捜査はむずかしいらしく、ここ数年で解決した同種の事件は、〈C銀行D支店〉の6000万円盗難事件と、〈E銀行〉の700万円蒸発事件”くらいなものだ。

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