奥様会のボスママ、車種やマンションの階数で格付け…驚きの【駐在妻あるある】 日本人村の洗礼と見えないヒエラルキーで夫婦に限界が

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昭和な労働環境にワンオペも

 他方で、意外なほどスポットが当たってこなかったのが夫側の激務と、それに伴う「夫婦関係の崩壊リスク」だ。

「海外の労働環境を勉強していて驚いたのですが、海外では日本の労働基準法が適用外になってしまうんです。そのため、何時間残業しているか管理もされておらず、朝は6時半に家を出て、夜は21時22時に帰宅するのはザラ。日本から出張者が来れば朝5時にお迎えに行き、夜は会食のアテンド、さらに土日は上層部とのゴルフ接待……」

 夫側も昭和のモーレツ社員のような過酷な働き方を強いられ、一方で、妻側は異国の地で頼れる人も少なく、極限のワンオペ育児。夫婦双方がギリギリまで追い詰められ、余裕をなくす。前川さんのもとには、互いへの不満が爆発し、離婚や女性問題に発展してしまった相談も少なくないという。

「企業側には、妻を『夫のパフォーマンスを最大化させるためのケア要員』と見なす風潮が、今でも根強く残っています。私の友人でも、夫の会社から呼び出されて帯同を強く迫られたケースがありました。そこには妻自身のキャリアや人権への配慮が欠けており、企業の古い体質が浮き彫りになっていると感じます」

「ケア要員」という呪縛

 企業側には駐在員本人だけでなく、家族へのメンタルサポートも必須であると前川さんは訴える。

「現在、日本のグローバル人材の流出は深刻です。9割以上の企業で海外からの『途中帰任』が発生しており、さらに帰国後2年以内の離職率は50%に上るというデータもあります。企業の挑戦を個人にとってもプラスにするためには、住まいや手当といったハード面だけでなく、妻や子どもへの心のケアというソフト面への支援が不可欠だと思います。『お金や物を与えているからいいだろう』という考えでは、もはや優秀な人材を確保し続けることは難しいでしょう」

 家族を企業戦士のケア要員として捉えるなら「ケア要員のケアまですべき」と前川さん。

 では、当事者である駐在ファミリーはどう身を守ればよいのだろう。前川さんは、何よりも「夫婦のコミュニケーション」が鍵だと語る。

「深刻な夫婦問題に発展してしまうケースの根底には、やはり対話不足があります。赴任が決まったら、“会社に言われたから行く”のではなく、“家族としてこの道を選択する”という意識を持てるまで、しっかり話し合ってほしいです」

 また、日本で帰りを待つ親族や友人の接し方も重要。たとえ庭付き・プール付き、ハウスキーパー付きの豪邸に暮らしたとて、その内側の苦労は周りには見えないもの。「いい生活をしているんでしょう?」という色眼鏡を外し、まずは「大変じゃない? 困っていることはない?」と、その苦労に寄り添う姿勢が求められる。

「異国の地で生活することは、想像以上に大変なこと。駐在中の方は、まず海外で生きている自分自身を、とにかく褒めてあげてください。そして、すべてを自分たちだけで解決しようとせず、外部のサポートを頼ることをためらわないでほしい。それが、自分と家族の心を守るための第一歩だと思います」

お話を伺ったのは……
前川由未子さん
金城学院大学国際情報学部 専任講師。臨床心理士、公認心理士。産業組織領域を専門に、これまでに5000人以上の支援に携わる。2025年、海外居住者のメンタルヘルスケアを提供する(株)Taznaを設立。

取材・文/荒木睦美

デイリー新潮編集部

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