華やかな「駐在妻」のリアル…駐妻だった母の悲劇、“自分も同じ道を辿りかけて” 専門カウンセラー女性の告白

国内 社会

  • ブックマーク

【前後編の前編/後編を読む】奥様会のボスママ、車種やマンションの階数で格付け…驚きの【駐在妻あるある】 日本人村の洗礼と見えないヒエラルキーで夫婦に限界が

 夫の海外赴任に伴い、優雅な生活を送っていると思われがちな駐在妻……昨今では“駐妻”なる略称もある、まぶしい存在だ。

 ***

 だが、一見華やかで羨望の的となるイメージがあるが、実はその裏側で孤独や深い苦悩を抱えている女性も少なくないという。

 元駐在妻であり3児の母、現在は臨床心理士として大学で教鞭をとりながら、海外在住者のメンタルケア事業を立ち上げた前川由未子さんは、この実態を改善したいという強い思いから活動を始めた。

原点は母親の悲劇と自身の「発狂」体験

「私自身、幼少期に父親の仕事でアメリカに帯同していたのですが、その間に母の自死を経験しています」と前川さんは語る。

「母は元々、私を生んだ半年後に産後うつを患い、治療を継続しながらの渡米でした。海外生活が直接のきっかけではないものの、赴任先であったインディアナ州の冬の雪深くて暗く厳しい気候、父が物理的な助けになると思って同行させた祖母との関係によるストレス、そして月に一度の父の海外出張による孤独などが重なり、次第に追い込まれていったようです」(前川さん、以下同)

 母親の死という壮絶な出来事をきっかけに、前川さんは7歳でカウンセラーを志すことを決意する。

「なぜか自分のせいだと直感的に思ったんです。心理士になって母のような人を救うことでしか、私に生きる道はないと、その時に決心しました」

 大学で心理学の博士号を取得し、大学講師の傍ら、心理士として医療や教育現場でのカウンセリングに携わってきた。やがて運命的なことに、前川さん自身も駐在妻として夫に伴い、タイに帯同することになる。

「渡航したのは、長女が1歳半で長男がお腹にいた妊娠8ヶ月のとき。コロナ禍でのロックダウン寸前でした。着いて数日で街がロックダウンしてしまい、スーパーや病院等以外のほぼすべてが閉鎖されてしまって。当初の計画はすべて崩れ、右も左も分からないまま、お腹だけが大きくなっていく……。強い不安に駆られて、本当に発狂したようになってしまいました」

 その後、前川さんは無事に出産を終えたが、生まれたばかりの長男とイヤイヤ期真っただ中の長女を抱えての「おこもり生活」に、次第に精神が追いこまれていった。

「子どもたちを怒ることが増えてしまい、そんな自分に罪悪感を覚えて……。『こんなに怒ってばかりのママだったらいないほうがいい』って、17階のベランダに吸い込まれそうになったんです。でも寸前で『お母さんと同じだ、ヤバい!』と思いとどまれた。それで、『このままだとマズい、好きなことをやらないとダメだ』と思って、メンタルケアのボランティアを始めたんです」

次ページ:日常生活に潜む「地味でも逃げ場のないストレス」

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。