「憧れは河合奈保子さん、大好きなのは松田聖子さん」「忙しすぎて歌詞を覚える余裕もなく…」芳本美代子、40周年の節目に“デビューからの紆余曲折”を振り返る

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選曲には意向を示さず、目の前のことを楽しんでいた

 デビュー1年目の駆け出しの頃と、オリコンTOP10入りシングルを5作連続でリリースしたデビュー2年目から3年目とでは、どちらが忙しかったのだろうか。

「それは間違いなく1年目ですね! 毎週のようにラジオ局やレコード店のキャンペーンに加え、デパートの屋上などイベント会場での歌と握手会がありましたから。でも、若い時は移動中に数秒で眠りにつけたので(笑)、睡眠時間は確保できていました。

 ただ、テレビではだいたいどこでもワンハーフといって、1番とサビの繰り返しだけで歌うのに対し、イベント会場ではフルコーラス歌って、それを3ヶ月ごとに繰り返すのが大変でしたね。『本当はどの曲も1年かけてじっくり歌いたいのに……』という想いがありました」

 ちなみに、今回サブスクで解禁された『アルバム&カップリングTOP15』を見てみると、その1年目の夏にリリースされた1stアルバム『SURF WIND』の収録曲が圧倒的な人気となっている。サブスクでは、つまみ食いのように聴く人も多い中で、ほぼ収録順に聴いている人が多いのは、アルバム本編の全楽曲の歌詞を松本隆が手がけている影響も大きいだろう。本作は、当時15歳から16歳にかけてのレコーディングで声の幼さはあるものの、歌唱自体はとても安定している。

「松本隆先生の世界観で統一されていることや、デビューに向けて曲をいろいろと集めてくださった選りすぐりのアルバムだからこそ、人気なんでしょうね。収録曲の中では、エレベーターが突然故障して二人とも閉じ込められてしまう『透明なエレベーター』という曲が好き、というファンの方の意見をよく聞きます。

 でも、アルバムの中から『あの曲をシングルにしたい』といったこだわりは、私には一切なかったですね。もちろん、この曲が可愛いなとか気に入っているとかはたくさんあるんですが。そういえば、シングル用に2曲ある中で『どちらをA面にしたほうがいい?』といったことを聞かれたこともないですね」

 それは、西城秀樹や岩崎宏美などを輩出し、音楽面でもしっかりと育てようとした所属事務所(芸映)からの制約が大きかったのだろうか。

「いえいえ、5年先輩の河合奈保子さんは、私がデビューする頃には、ピアノも弾けて作曲もなさっていたし、3年先輩だった石川秀美さんも、バンドの方と意見を交わしながら作られていたと思いますよ。私の場合は単純に、『次はこういう感じでいこう』と言われて、それだけで楽しめていたんです」

 自分の意向を示さずとも、与えられた仕事を懸命にこなした結果、アイドルとして確かな実績を残せた芳本。それは、こうしてインタビューをしている間も終始にこやかで、周囲を明るくさせるという天性のキャラクターによる部分も大きいように感じた。

 インタビュー後編では、その後のアーティスト寄りの音楽活動や、40周年を機にライブを再開した経緯などについて尋ねてみたい。

芳本美代子(よしもと・みよこ) 
1969年3月18日生まれ、山口県出身。85年3月21日、シングル「白いバスケット・シューズ」でレコード・デビューし同年の新人賞を数多く受章する人気アイドルに。翌年の6thシングル「青い靴」では、初のオリコンTOP10入りを果たし、以降「Auroraの少女」「横顔のフィナーレ」「ヴァニティ・ナイト」「東京Sickness」の計5作が週間TOP10入りとなった。90年に、ミュージカル『阿国』に出演したことを機に、ドラマや舞台を軸とした女優業にシフト。20年には、自身のYouTubeチャンネル『みっちょんINポッシブル』を開設、23年に、大阪芸術大学短期大学部の教授に就任。25年は、デビュー40周年を記念して、ライブを行うなど音楽活動にも積極的に。同年10月14日には、これまでのオリジナルアルバム8作とライブアルバム1作がサブスク解禁された。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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