日本人の血を引く「ドイツ人女性監督」が描いた“ユダヤ人ホロコースト”をたどるロード・ムービーと重なる監督の人生とは
2025年は「終戦80年」の節目だった。そのため、第2次世界大戦を振り返る企画が、多くのメディアで取り上げられた。
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映画界もその例に漏れず。外国映画では、やはりナチス・ドイツやヒトラーを顧みる作品が多かった。たとえば、「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」(ヨアヒム・A・ラング監督、ドイツ・スロバキア合作)や、「ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師」(トッド・コマーニキ監督、アメリカほか合作)などだ。
そんななか、1月16日から、たいへんユニークな映画が公開される。「旅の終わりのたからもの」(ユリア・フォン・ハインツ監督、ドイツ・フランス合作/原題:TREASURE)だ。ドイツ人の女性監督が、ナチス・ドイツによるユダヤ人ホロコーストを題材に描く、ロード・ムービーである。このたび、そのフォン・ハインツ監督に、オンラインでインタビューする機会があった。
これが、映画に負けずユニークなインタビューになったのだが、その前に、映画本編について、ご紹介しておこう。
ユダヤ人ホロコーストをたどる父と娘
舞台は、1991年のポーランド。この地に、ニューヨークで生まれ育ち、ジャーナリストとして成功している女性ルーシーと、父エデクがやってくる(原作では80歳)。
エデクは、ポーランドで生まれ育ったユダヤ人である。戦時中のナチス・ドイツによるホロコーストを逃れ、アメリカに渡ってきた。そしていま、50年ぶりに、娘ルーシーと、生地を訪れるのだ。
かつてポーランドで、どんな目にあったのか、エデクはルーシーに、あまり詳しく話していないようだ。そこで、ジャーナリストでもあるルーシーは、父の過去や、自分のルーツを求めて、あまり乗り気でない父を連れ出し、ポーランドへやってきたのである。母は1年前に亡くなったばかりだ。
現地に着くや、エデクは、急に姿を消したり、電車には乗らないと言い出したり、故郷ウォッチを避けたり、わがままのし放題である。実は、彼のわがままには、相応の理由があるのだが、ルーシーには、そこまでは理解できない。すれ違いばかりの父娘だが、それでも気のいいタクシー運転手ステファンと知り合い、彼の車を借り切って、旅に出る。
旅の途中でエデクは、父親が、大きな紡績工場を経営していたことを語る。そして、かつて住んでいた家を訪れ、いまの住人に会うのだが……旅路は、かつてエデクが収容されていたアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所へとつづく……。
このように、父のホロコースト体験を追跡する父娘の“ロード・ムービー”だが、この映画、一筋縄ではいかない仕掛けがある。
まず、この父娘の設定が絶妙である。父エデクは、妻を亡くしたばかり。娘ルーシーも離婚して独身。どうやらアメリカで、この父娘は、どちらも孤独な生活をおくっているようだ。父は、そんな娘がいつまでも再婚しないでいることが不服で、嫌味をいう。娘はそれをお節介だと感じ、イライラして、ことごとく父と対立してしまう。
ルーシーを演じるレナ・ダナムは、作家・映画監督でもある才女だが、その“ふくよか”な身体つきを生かし、シリアス芝居とコメディ芝居を自由に往還する、見事な演技を見せてくれる。
後半、この父娘の旅は、ある意味で“破綻”するのだが、その先には、意外な出来事が待っていた。それが何なのかは、スクリーンでご確認いただきたい。ひとによっては、ハンカチが必要だろう。
ポーランドが舞台だけに、フレデリック・ショパン博物館なども登場、ショパンのピアノ曲も流れる。美しい風景がつづき、旅情ムード満点の映画でもある。
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