現役農家が指摘する「おこめ券」の盲点 2026年に起きるかもしれない民間業者の「投げ売り」と「米価の暴落」

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 高市早苗政権の誕生により、農林水産大臣が在任期間わずか5カ月の小泉進次郎氏(44)から鈴木憲和氏(43)に替わった。鈴木大臣は2012年の衆議院議員選挙で初当選、13年目にして大臣の座を射止めた元農水官僚だ。

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※本稿は「週刊新潮」2026年1月1日/8日号掲載【現場農家たちの本音 鈴木農水大臣は「コメ政策」がわかっていない!】の一部を抜粋/編集したものです。

大臣の原則は「価格はマーケットが決める」

〈令和7年(2025年)産の米が大幅な増産だったのに、米価は下落するどころか高止まりしたままだ。そんな中で鈴木大臣は、就任直後からたびたび記者会見を開いているが、実績がないこともあって、この国の農政をどう導くのか、まだぼんやりとしている。

 例えば、農家が再生産と再投資をするには米価の安定が必要だと述べる一方で、「需要に応じた生産」が原則で「価格はマーケットが決める」という。これをどう理解すればいいのだろうか。

 現在、令和7年産米はいずれ暴落すると囁かれているが、暴落しても価格は市場に任せるのだという。それでは農家が困らないだろうか。今の米事情は不安定だ。今後の舵取り次第では農家にも消費者にも大きな影響を与えかねない。そのことを、農家自身はどう受け止めているのだろうか。〉(奥野修司/ノンフィクション作家・以下同)

現役農家の見解は?

〈鈴木大臣が農水省時代に研修で訪れたのが福島県須賀川市だという。それならと、同市で中堅農家として活躍している渡辺雄大氏(43)と菅野誠氏(48)の二人(いずれも仮名)に、私がまとめた「鈴木農林水産大臣記者会見概要」を読んでもらい、感じたことを率直に語ってもらった。インタビューの冒頭で、世間で話題になっている「おこめ券」について軽く尋ねたのだが、それが意外な展開になった。〉

――おこめ券について、世間は賛否両論ですが、お二人はどう思いますか。

菅野:農業の問題というより、日本の貧困事情があらわになったように思います。

渡辺:私は、おこめ券そのものより、輸入米や備蓄米などを含めて購入できるかが気になっています。おこめ券がそこへ流れると逆効果じゃないですか。

――ある団体が、低所得者層におこめ券でどんな米を買うのかと尋ねると、安い輸入米を1袋でも多く買いたいと答えたそうです。

渡辺:当然でしょうね。私の心配はそこなんです。今は7年産米が動いていません。高いから売れないんです。そこへおこめ券を出されたら、国産米はさらに動かなくなるでしょう。高止まりしたまま、安い輸入米から売れていくんです。

――国産米に逆風ですね。

渡辺:輸入米も買えるとなったら、商社を通して輸入米がどんどん入ってきます。美味しい7年産米を食べましょうというおこめ券でない限り、生産者にはとんでもない逆風になると思います。きっと我々の死活問題になりますよ。

――そういう展開は想像できなかったですね。

渡辺:業者は、農家から米を買うのに金融機関から借り入れしています。それなのに予定数量が売れなかったら、キャッシュフローが回らなくなり、投げ売りするしかないのです。今は我慢して売っていますが、借金が返せなくなれば、倒産の連鎖ですよ。

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