不倫を経て「3度目の本気の恋」継続中…60歳夫が妻の振る舞いで“透明人間”になったワケ

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【前後編の前編/後編を読む】60歳夫の「人生の肝」3人の女性 別れない妻、元・不倫相手…自称「最後の恋」のお相手は

「自分の思うように自由に生きたい」。それが多くの人の望みだろう。だが同時に「自分勝手に生きて人に迷惑をかけてはいけない」とも思っているはずだ。だからこそ、社会は一定の秩序が保たれている。

「でもやはり、人は自分の心に忠実にしか生きられないような気がするんです」

 そう言うのは田所寛一さん(60歳・仮名=以下同)だ。中背ながら引き締まった肉体と柔和な表情が若々しい。

「一生にひとりとしか一緒になれず、添い遂げなければならないという法律があるなら僕は抵触しますよね。でも、好きになった人と一緒に暮らしたいという素朴な欲求を貫くことがいけないこととは思えないんです。妻子の生活はどうするんだと言う人もいるかもしれないけど、それは夫が妻子を養うことを前提にしている。結婚生活においては互いに協力すべきだから、妻のほうが財産をもっているなら、妻子の生活云々は問われないはず。いちばん大事な“愛情”を抜きにして結婚生活が語られている。そんな気がしてならないんですよ」

 寛一さんは一気に話して「あ、すみません。いきなり生意気なことばかり言って」と頭を下げた。世間一般の価値観はわかっているものの、本来、価値観など人それぞれだと思っているのだろう。

3度目の「本気の恋」をした

 人は人生で「本気の恋」を3度すると言われている。寛一さんは今、その3度目にさしかかったところだと少し耳を赤くしながら言った。いくつになっても恋の道に“老い”というものは存在しない。そして、世間から「道ならぬ恋」と言われることをしている大人は常に論理武装をしたがる。

 彼が結婚をしたのは29歳のときだ。相手は、新卒で入った食品関連企業の同期、裕美子さんだった。同期会でたまに顔を合わせてはいたが、ふだんはオフィスも別だったからめったに話すことはなかった。だが27歳のとき、会社を挙げてのプロジェクトチームが立ち上がり、寛一さんと裕美子さんも選出された。20代はふたりだけだった。

「仕事を通して親しくなりました。仕事って、人間力が全部見えちゃうところがあるでしょ。その中で僕は裕美子を何度もすごい人だなと感じた。最若手だから、いろいろ気を配らなければいけないことはあるけど、逆に若手だからこそ先輩にすり寄ったり媚びたりしたほうがいいケースも出てくるんですよ。裕美子はいっさい、それはしなかった。なのに気配りのできる若手として先輩たちから絶大な信頼を得ていた。僕にはとても真似できないと思いました」

 気を遣っているのに遣っているように見せない。先輩の意を汲んで先回りして仕事をこなすが、決して自分自身をアピールはしない。できないこと、筋が違うことはストレートにみんなの前で言う。当たり前のようで若手にはできかねることを、裕美子さんは淡々と、そして平然とやってのけた。

「最後のほうはまるで裕美子がリーダーのようでした。権力を笠に着ないリーダーを初めて見たと周りは噂していましたね。その裏には彼女の持って生まれた天性の愛嬌があるのかも。笑顔がいいんですよ。あの笑顔で頼まれたら誰も断れない」

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