東日本大震災で「都内マンション価格」はどう動いたか 「市場の異変」が表れたポイントとは

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江戸川区では「流動性が先に回復」

 江戸川区は、回復期において成約件数指数が127と高く、流動性の回復が際立つ。成約単価指数も107まで戻しており、右上象限に入る。

 ただし、その位置取りは中央区・江東区とはやや異なる。江戸川区の場合、まず件数が大きく伸び、それに引き上げられる形で価格が回復した構図が読み取れる。

 市場の評価が一気に高まったというより、「動きやすさ」が先に戻った結果として、価格が追随した回復と整理するのが妥当だろう。

世田谷区は「慎重姿勢が継続」

 世田谷区は、震災直後に価格・件数ともに低下し、回復期でも成約単価指数95、成約件数指数98と、いずれも100を下回った。左下象限から左下象限に留まった数少ない区である。

 価格が大きく崩れなかった点だけを見れば「底堅い」とも言えるが、流動性が十分に戻らなかったことを踏まえると、市場は慎重姿勢を解かなかったと読む方が自然だ。

 ブランドや立地の評価は維持された一方で、取引判断は先送りされた。そんな“静かな様子見”が続いた市場であった。

足立区は「特殊な動きを見せた」

 足立区は、震災前の時点で価格が安定していた区であり、震災直後も価格の下落は限定的だった。回復期には成約単価指数107、成約件数指数105と、ともに100を超え、右上象限に位置する。

 ただし、その回復は中央区・江東区とは性格が異なる。足立区の場合、価格と件数がほぼ同時に戻っており、「流動性先行型」でも「価格先行型」でもない。

 価格と件数がほぼ同時に戻っている点は、他区と異なる特徴である。これは市場全体の評価が一様に高まったというより、価格帯や立地による物件の選別が進んだ結果、成約物件の質が変化した可能性を示唆している。

 このように、同じ「回復期」であっても、各区の回復プロセスには明確な違いがあった。価格と流動性の関係から見えてくるのは、一律ではない、街ごとの固有の軌跡である。

価格より先に「流動性」を見る意味

 不動産市場において価格は「結果」である。一方で流動性は、無数の判断の積み重ねの結果として表れる。そのため、市場の違和感はまず、「動きの鈍さ」として表れることが多いのだ。

 マンション選びにおいても、「値段が下がったか」だけでなく、「売れているか」を見ることで、市場の温度をより正確に感じ取ることができる。

 本稿で示したのは、2011年前後という特定の局面における市場の動きである。

 次に市場が“揺れる”ときも、私たちは画面上の「価格」の数字に一喜一憂するだろう。しかし、その背後にある「取引の現場(流動性)」に目を向ける冷静さを持つことが、後悔しない選択への第一歩となるのである。

【著者プロフィール】
マン点(まんてん) マンションアナリスト。一級建築士。20年以上続けている不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人
X(旧Twitter):https://x.com/1manken

デイリー新潮編集部

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