“飛影はそんなこと言わない”アニメと漫画、真逆のキャラアプローチ 「炭治郎」「デク」が“濃い”のには訳があった
スター獲得と内製化、2つのルート
――国内では人手不足が叫ばれていますが、アニメ業界はいかがでしょうか。
伊藤:体力のある会社がスタッフを抑えにかかる風潮はより強くなっているとは思います。特にMAPPAさんが一番勢いもあるし、顕著なんじゃないですかね。「チェンソーマン」「呪術廻戦」といった作品を先々やっていくのだとすると、少なくとも数年後まではうちで働いてねという話をするわけです。スタッフとしても「じゃあ3年後までは生活は安泰だ」となりますから。
MAPPAさんは自社でお金も出して製作としても作品に関わろうという体制を強めているので、クリエイターに還元しようとするマインドがその循環を生んでいるんじゃないでしょうか。スターが在籍しているので、さらに良いアニメーターも集まりやすい。一方で、自分のところで全て工程を賄うべく内製化を目指すスタジオも増えており、クローバーワークスはテレビアニメ一つの話数の動画を全部自社でやったことがウェブで語られていました。人の確保という点では、この2つのルートが今後増えていくのではと思います。
良い原作は5年前からチェックしている!?
――テレビアニメでいえば15年前にジャンプで解決した岩代俊明さんによる漫画『PSYREN -サイレン-』や 25年以上前に少年チャンピオンで連載されていた『鉄鍋のジャン!』とかなり前の作品のアニメ化が相次いで発表されました。それほどアニメ化する原作は枯渇しているのでしょうか。
伊藤:雑誌に漫画の1話が出た瞬間にいろんなところが手を挙げるんですよね。例えば今年4月から放送される「スノウボール・アース」は5年前に1話が出た時に話題になっていて「どこかがアニメ化するだろうな」と思ったら、なるほど決まっていましたね。
――そんなにすぐに押さえられるものなのですね。原作が枯渇しているのであれば、アニメオリジナルをもっと作る方法もあると思うのですが。
伊藤:漫画の仕事もしていますが、漫画、もっといえば編集者の技量はものすごく強いというのをここ数年感じています。集英社、講談社、小学館といった出版社が持っている漫画をつくるノウハウというか、蓄積された集合知みたいなものというべきものなのかもしれません。比較するとアニメ側には、その視座を持っている人はそんなに多くないな、と個人的には思っています。打ち合わせをしていると、アニメと漫画では視点が大分違うのだなと感じます。
――違いはどのあたりにあるのでしょうか。
伊藤:ある話数をプロットから脚本にした際に、編集者から「うーん、このキャラってこんな行動をとりますか? こいつはこんなことしないんじゃないかなあ」と言われたんです。アニメって物語が先にあって、キャラをなんとなく流れに合わせて行動させることが多いんですけれど、漫画は逆なんです。
まずキャラの強さがありきで、キャラクター中心主義なんです。これは編集者じゃなく、漫画家さんと話していてもそう感じます。脚本からネームを起こす時に「このキャラクターの行動が気になります」と指摘されます。かつて2ちゃんねるワードで「飛影はそんなこと言わない」というものがあったんですが、これは意外と真理だったんだなと知ったのは学びでした。
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