「風呂カラオケがおススメ」「のどあめよりガムを」 健康長寿の命「のど」の守り方

ドクター新潮 ライフ

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のどという「栓」

 私たちは力を入れようとする際に「グッ」と踏ん張ります。その際、当たり前のことですが、身体がフニャフニャ、グニャグニャしていたら踏ん張りようがありません。

 では、私たちはどのようにして身体を「ピン」と保ち、踏ん張ることができているのでしょうか。肺からお腹回りをしっかりと膨らませることによって、です。イメージするならば、胴体の中に小さなバランスボールが入っていて、それがパンパンに膨らんでいるから身体はバランスを取れる。そのバランスボールがフニャフニャと萎(しぼ)んでしまっていたら、身体もフニャフニャになってしまいます。

 そして、バランスボールが膨らんだ状態を保つには、そこに空気を吹き込んだ上で、その空気が漏れて逃げないようにする「栓」が欠かせません。この栓の役割を果たすのがのどで、のどを閉じることによって初めてバランスボールは膨らんだ状態を維持できるわけです。

 なお、動き出す際の「よっこいしょ」という声は、身体に力を込める時に、あえて大きな声を出してのどを閉じると、より大きな力が出せることを、無意識のうちに“発見”した人間の知恵といえます。

 より正確に説明すると、もともと「声」とは、力を出す時にのどを閉じ、声帯が振動することで“たまたま”生じた「音」であり、いわば副産物でした。先ほど、発声はおまけのようなものと説明したのはこのためです。

 いずれにしても、「よっこいしょ」と、ちゃんと声を出して力を入れられる状態は、老け込んだというよりも、まだしっかりと踏ん張り、身体を動かすことができている証しと捉えるべきなのです。「よっこいしょ」の声すら出せず、栓をすることができなくなる方がよほど危険な状態です。

室伏広治は発声を使い分けていた

 ちなみに、オリンピックのハンマー投げ金メダリストの室伏広治さんは、投擲(とうてき)の際に、さまざまな声を使い分けていたそうです。声の種類によって、力の入り具合が変わるからとのこと。「力を入れること」に「のど」がいかに深く関係しているかが分かる話です。

 高齢者にとって転倒およびそれに伴う骨折は、要介護に至る大きな原因の一つですが、「のどという栓」がない限り、うまく踏ん張ることができず、転倒が誘発されてしまいます。年を重ね、段差などがないところでもつまずくのは、もちろん視力や認知機能などの要因もありますが、実のところのどの衰えが深く関係しているのです。

 そして、転倒が怖くなったり、踏ん張りが利かず身体を動かすのが難しくなってしまったりすると、外を出歩くこと自体がおっくうになり、家にこもりがちになる恐れがある。すると、サルコペニア(加齢性筋肉減弱現象)が促進され、フレイル(加齢に伴う健康と要介護の中間の状態)、そして要介護へと陥るリスクが高まってしまいます。

 このように、人生100年時代において、高齢になっても自立的な生活をしてQOL(生活の質)を維持し、健康寿命を長く保つための入り口ともいえるのが、のどの健康なのです。

 のどは、粘膜に覆われた声帯などによって構成されています。声帯は筋肉ですから「栓を閉じる」という動きが可能なわけですが、他の筋肉と同様に、何もしなければ加齢とともに衰えていきます。しかし、のどは自分では見えないこともあり、声帯が衰えていても気が付きにくい。そこで、のどの健康対策としては、まずは衰えをセルフチェックすることが大事になります。

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