せっかくの支援団体は「ごくちゅうの恋」が原因で解散…「頂き女子りりちゃん」事件の唐突かつ“喜劇的なエンディング”とは

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「振り込まない際は横領の罪で法的処置を行う」

 これだけだとよくわからないだろうが、要は獄中の彼女に「恋人X」ができ、すっかり依存してしまった結果、支援者との信頼関係が完全に断ち切られてしまったのである。

 Xは彼女とは別の刑務所(あるいは拘置所)に入っている、元暴力団員を自称する受刑者だという。男女の受刑者同士が直接知り合う機会は全くないが、Xは便箋70枚という長々とした手紙をりりちゃんに送り、「愛に餓えた」りりちゃんはその手紙を読んでXにすっかり恋してしまったそうなのだ。

 2024年の12月26日に、りりちゃんから支援者のひとり・立花奈央子氏に届いた手紙には、「いぬわんの収益をX氏の口座に振り込むこと」「振り込まない際は横領の罪で法的処置を行うこと」という一文もあったそうだ。これでは信頼関係が失われるのは無理もなかろう。

 こうして、「事件」の構図はすっかり変質してしまった。中高年男性を籠絡してきた詐欺女子が、ほぼ同じ手口を使った男性に籠絡されたと見るのが自然だろう。

 もとはといえば彼女がホストに疑似恋愛的感情を抱いたことが事件の発端だった。

 そこでホストに貢ぐために彼女は自身に疑似恋愛的感情を抱く男性を大量に抱えるシステムを構築した。そして逮捕された。

 受刑者となった彼女に、別の受刑者が疑似恋愛関係を持ち掛け、そこに彼女ははまってしまった。

「愛の言葉」を巧みに操る詐欺師だったはずのりりちゃんが、いつの間にか操られる立場になっているように筆者には見える。

 これはまるで詐欺師モノの映画やドラマの展開のようだ。りりちゃんや関係者にあえて失礼な言い方をすれば、りりちゃんの物語は安っぽい「お笑い」に終わってしまったのである。

 一部の社会学者やジャーナリストは、りりちゃん事件を「若き女子の現代社会への復讐劇」として描き、被害者男性を「道化」に仕立て上げた。支援者は、さしずめ「白馬の騎士」である。「りりちゃんVS被害者」でも「りりちゃんVSホスト」でもなく、「りりちゃんVS現代社会」というのが主要なプロットだった。

 だが、りりちゃん自身が演じた終幕では、主演女優だったりりちゃんが自ら降板し、「揉め事」の一切が漂白されてしまった。たんなる「ドタバタ喜劇」だったのである。想像だにしなかったエピローグだが、これが世間を騒がせた「頂き女子」の真の姿なのかもしれない。

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 第1回【「おぢから大金をだまし取りつつ恨まれない方法」…中年男性を喰いモノにした「頂き女子りりちゃん」事件をビジネス的観点から読み直す】では、模倣犯まで登場した「頂き女子マニュアル」の衝撃的な中身について触れている。

篠原 章(しのはらあきら)
批評家。1956年山梨県生まれ。経済学博士(成城大学)。大学教員を経て評論活動に入る。主なフィールドは音楽文化、沖縄、社会経済一般で、著書に『日本ロック雑誌クロニクル』、『沖縄の不都合な真実』(大久保潤との共著)、『外連の島・沖縄』などがある。

デイリー新潮編集部

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