「ガラパゴス産業は強い」「失敗を称賛せよ」日本がノーベル賞大国であるために何が必要か 英名門大の日本人研究者が提言する日本の強みと課題

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「独創性」と「研究で遊ぶ心」を守るには

 では、日本はこれからどこへ向かうべきでしょうか。

 まず必要なのは、研究資金の「ベースアップ」です。競争的資金ではなく、研究者が自動的に得られる研究費を充実させること。これにより、資金集めに苦心する必要性が薄れ、研究者に時間が生まれます。流行に左右されないで、本来日本人の持つ遊び心と独創的な研究の芽を守ることができます。

 研究とは本来楽しいものなのです。ドラえもんの道具を一つでも創ることに夢中になれる研究者は、素晴らしい職業ではないでしょうか。22世紀に現れると予想されて描かれた技術が自分の手でできる、人の命を救える、世の中の問題を解決できる、誰も知らなかったことを自分が見つける、新しいデザインをする。全て研究者の仕事です。楽しいことです。若い人にもぜひおすすめしたい職業です。日本の研究者が研究を楽しんでくれることが一番の環境改善なのです。

ラストチャンスを逃すな

 日本にはまだ、勤勉で優秀な人材と、精緻な技術力という素晴らしい資産があります。日本人研究者はきっちりとした仕事ができる世界でも類をみない優れた集団です。変えるべきはプレイヤーではなく、フィールドのルールと土壌です。

 私の所属するインペリアルカレッジ・ロンドンなどのトップティアでは、研究の多様性が極めて重視されます。「何が次のブレイクスルーになるか」は、誰にも予測できません。だからこそ、広く多様な好奇心駆動型の研究に投資し、失敗を許容する文化があります。

 リスクを愛し、異端を歓迎し、失敗を称賛する。そもそも日本はエンタメ業界の創造性では世界トップなのです。研究でもできるはずです。このマインドセットの転換こそが、日本が「ノーベル賞大国」であり続けるために重要と思います。海外で学んだ私たちが、日本の未来のために力を尽くす覚悟は、いつでも整っています。

石原 純(いしはら じゅん)
インペリアルカレッジ・ロンドン バイオエンジニアリング学科准教授(免疫工学)。 2014年に東京大学で博士号取得後、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)、シカゴ大学での博士研究員を経て、20年よりインペリアルカレッジ・ロンドンで研究室を主宰。25年より現職。日米で製薬会社を複数起業。科学を肴にお酒を楽しむコンセプトの「サイエンスバーインキューベータ」を東京四谷に立ち上げたことでも知られる。

デイリー新潮編集部

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