インバウンドが少ない日本の名湯7選! 雪国の秘湯から関東の“穴場”まで一挙に紹介

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「北海道の屋根」は源泉かけ流しパラダイス

「北海道の屋根」といわれる大雪山系の東側、うっそうとした原始林に囲まれた糠平湖の畔にある温泉地が「ぬかびら源泉郷」だ。 

 札幌市内から車で約3時間半、JR根室本線・帯広駅からバスで1時間40分ほどで行くことができる。

 近年ではアウトドアスポットとしても知られ、初夏から秋にかけては湖畔でキャンプ、カヌーやサイクリング、登山、森林浴、釣り。冬はスキーやワカサギ釣りを楽しむ人でにぎわう。

 上士幌(かみしほろ)町観光協会の松嶋優弥さんによれば「現時点ではインバウンドは1割にも満たない」そうだ。

 温泉郷の宿泊施設は開湯の宿・湯元館をはじめ全部で8軒、その全てが「源泉かけ流し」。泉質はナトリウム―塩化物・炭酸水素塩泉(重曹泉)で、肌が滑らかになるだけでなく、飲用することで胃腸病にも効くといわれている。

 松嶋さんが言う。

「日帰り入浴が可能な施設は6軒で、自然林に囲まれた露天風呂や洞窟風呂、ひのき風呂などそれぞれ趣向が異なります。温泉好きの方はぜひ長期滞在し、複数の施設で温泉に漬かってみてほしいです」

 実は今年6月に「地域おこし協力隊員」として町に採用され、愛知県から移住してきたばかりの彼が、“ヨソ者”目線で温泉郷の魅力を語ってくれた。

「移住当初はとにかく驚きの連続で、たとえば、ぬかびら源泉郷温泉公園には当たり前のように大量の野生のエゾシカがいて、人の近くで何の警戒もせずノンビリしているので衝撃でした。このシカたちを眺めながら源泉かけ流しの足湯(無料)でくつろぐのがオススメです。あと、町内にあるナイタイ高原牧場にはぜひ立ち寄ってほしいですね。日本一広い総面積約1700ヘクタール(東京ドーム358個分)の公共牧場で、初めて行った時はこれまでに見たことのないほど奥行が深い景観を前に感動しました」

 北海道ならではの雄大な景色のただ中で、温泉に癒やされる――想像するだけで至福である。

地酒と郷土料理が味わえる「幻想雪回廊」

 出羽三山の主峰・月山の麓という豪雪地帯にある肘折(ひじおり)温泉は、1200年以上前に開湯した歴史を持つ。

 昔ながらの湯治場の雰囲気を今に残す静かな温泉郷にある旅館は19軒。いずれも源泉かけ流しの浴槽を備え、主要泉質はナトリウム―塩化物・炭酸水素塩泉。保温効果や古い角質を洗い流す効果の他、炭酸ガスによる血管拡張効果で切り傷ややけど、リウマチ、神経痛、外傷、胃腸病、皮膚病などにも効果が期待できるという。

 東京からJR山形新幹線に約3時間半乗り、終点の新庄駅から1日に7本バス(所要約1時間)が出ている。比較的アクセスしやすい印象だが、なぜインバウンドが少ないのか。 

 大蔵村産業振興課の井上沙織さんに尋ねると、

「コロナ禍を経て、個人客重視にシフトした旅館が多いのと、働き手不足で客室の稼働数も以前より少なくなっているので、国内外問わず団体客を受け入れる余裕がないのが実情です」

“働き手不足”は大きな課題だが、静かな雰囲気が維持されているのは個人客にとってありがたい。

「冬にお越しになるなら、とにかく豪雪地ならではの豪快な雪の降りっぷりを体感してほしい。除雪体制も万全です」

 と話す井上さんの“一押し”は、

「1月の後半から2月中旬にかけての各土曜日に開催され、3~4メートルもの高さの雪壁にやさしい灯がともされる『肘折幻想雪回廊』が見ものです」

 こうした雪景色と共に味わいたいのが、各宿で供される地元の食材をたっぷり使った家庭料理である。

 同村出身だという井上さんが続けて話す。

「山形県産のお米は絶品。とくに朝、旅館の窓の外に降りしきる雪を見ながら食べるご飯はおいしい。一緒に郷土料理の納豆汁(すりつぶした納豆とみそをベースとした具だくさんの汁物)もぜひ味わってほしいです」

 近隣には地酒などを飲める立ち飲み店、いわゆる「角打ち」が楽しめる所もあり、地元住民との交流の場になっているとか。身も心も温まりそうな温泉地だ。

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