箱根駅伝で「東大リレー」を実現させた秋吉拓真選手 “最後の箱根”の先に見据える驚きの“二刀流”進路
2025年も残りわずかとなったが、新たな年の訪れとともに、20校21チームのランナーが往復217.1kmの難関に挑む箱根駅伝が幕を開ける。
25年1月に行われた前回大会で、学生連合の一員として8区を区間7位で激走し、古川大晃選手(当時、東大大学院・博士4年)との「東大リレー」も話題を呼んだ東京大学の秋吉拓真選手(あきよし・たくま/4年)も、自身2度目で最後の箱根路に向けて、静かな闘志を燃やしている。入学時は周囲との実力差に絶望を味わうも、地道に実力を伸ばした大学時代を振り返ってもらった。(全2回のうち第2回)【取材・文=白鳥純一】
【写真で確認】さあ行こう2度目の箱根路へ…現役東大生選手・秋吉拓真選手がこよなく愛するランニングシューズ
大学1年生で味わった初めての挫折
中学2年生の時に30kmの距離を走る「強歩大会」で、全校1位を獲得。兵庫県有数の難関校として知られる六甲学院高校1年の時に陸上を始め、箱根路を走ることを目指して東京大学の合格を掴み取った秋吉選手だったが、陸上部に一歩足を踏み入れた途端、厳しい現実を目の当たりにすることとなる。
「高校の頃はレベルの高い選手が周囲にいなかったこともあり、現実を知らなすぎて。『東大なら1番を取れるのでは?』と本気で思って入学したんですよ。ただ実際は、僕よりも速い選手がたくさんいて、自分との実力差に驚かされました」
大学1年生の夏には、旧帝大7校の学生による大会に出場。競技を初めてわずか3年で5000メートル14分台にまでタイムを伸ばして勢いに乗る秋吉選手は、同種目に出場するも、経験者たちに実力差を見せつけられた、
「強豪校のいない大会ですら上位になれない自分自身に本当に絶望して。今振り返ってみると、僕が味わった初めての挫折だったかもしれません」
その年の秋には箱根駅伝の予選会にエントリーするも、「練習の取り組み方すらもわかっていなかった」という秋吉選手は、「下から4分の1くらいの成績」で下位に沈んだ。
さまざまな出会いが箱根に導いた
厳しい現状を直視せざるを得ない秋吉選手だったが、さまざまな出会いが一筋の光を灯した。特に1年生の予選会を終えた後に出会った東大陸上部OB・阿部飛雄馬氏の言葉は、心の奥深くに刺さったそう。
「本気で箱根を走りたいのなら、その練習量では全然足りないよ!」
関東学連選抜(当時)で箱根を走った阿部氏のアドバイスを真摯に受け止めた秋吉選手は、自身の練習不足や本格的な競技の取り組み方をその時に初めて痛感することに。それまで毎月200km程度だった走行距離は、400、500kmに増え、それに比例するかのようにタイムも上昇気流を描いた。
さらに秋吉選手が大学2年生だった2023年には、阿部氏と同じく東京大学陸上部のOBで、関東学連選抜の一員として箱根を走り、前年に陸上部のコーチに就任した近藤秀一氏の本格的な指導を受けることに。実業団のGMOアスリーツに在籍経験のある近藤氏が手がけた実践的なメニューは、チーム内の競争を生み、秋吉選手を含む選手たちの実力も底上げさせた。
同年秋の予選会では全体54位の63分17秒で快走し、このレースでハーフマラソンの東大記録も打ち立てた。この年は100回目記念の大会で、関東学生連合チームの結成が見送られたため、残念ながら本戦出場は叶わなかったものの、従来ならばそれを実現可能にするものだった。
[1/3ページ]


