2026年は60年ぶりの「丙午(ひのえうま)」 出生率25%減の悪夢は再来するか?
2026(令和8)年の干支(えと)は「十二支」では“午(うま)”。「“うま”く行く」と洒落込む人もいるだろうが、十二支に「十干」を組み合わせると“丙午(ひのえうま)”となる。60年に1度回ってくる干支の一つにすぎないが、“丙午”は別格だ。そのわけとは――。
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【写真を見る】実は皇族にも! “夫を食い殺す”ともいわれる「丙午」生まれの有名人とは?
丙午には迷信がある。「丙午生まれの女性は気性が激しく、夫の寿命を縮める」、もしくは「夫を食い殺す」というものだ。もちろん俗説に過ぎないのだが、江戸時代前期に実在したとされる八百屋の娘・お七がモデルとされている。
今年、大晦日の「NHK紅白歌合戦」で坂本冬美は「夜桜お七」を歌う予定だが、このお七こそ八百屋お七だ。諸説あるものの、お七の家は「天和の大火」(1683年)で焼け出され、寺に避難する。避難生活の中で彼女は寺の若者と仲良くなるが、店が建て直されて一家は寺を引き払う。ところが、若者のことが忘れられないお七は、もう一度火事が起これば彼に会えると思い込み、自宅に放火。放火の罪で捕縛され、火あぶりの刑に処されたというストーリーだ。井原西鶴の「好色五人女」などで描かれ、江戸時代から浄瑠璃や歌舞伎でも演じられてきた。
そのお七が丙午(1666年)の生まれだった――それだけが迷信の根拠だ。なぜ「夫を食い殺す」まで想像が広がってしまったのかは不明だが、俗説のパワーは根強かった。江戸時代ならまだしも、明治になっても弱まることはなかったのだ。
前々回の丙午は1906(明治39)年だった。夏目漱石はこの翌年に発表した小説「虞美人草」の中で、男を惑わす悪女ヒロイン・甲野藤尾を丙午生まれに設定した。
また、当の丙午生まれだった坂口安吾は、戦後にこう書き残している。
《私の本名は炳五(ヘイゴ)という。男兄弟の五人目だから五の字がついてるが、炳はアキラカというような意味のほかにこれ一字でヒノエウマを表している字でもある。また、ヘイゴという音はヒノエウマの丙午に通じてもおって、ヒノエウマづくしのような名前だ。(中略)私が子供のころ、親類のジイサン、バアサンなどが頭をなでてくれたりしながら、お前男に生れてよかったな、女なら悲しい思いをしなければならないなどとよく言われたものである。》(「ヒノエウマの話」より)
そして安吾はこう続けた。
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