「お葬式の費用くらいは自分で用意して…」の落とし穴 「葬儀トラブル」激増のウラで数十万円もの「高額オプション」上乗せ問題
お布施は別払い
式後に感謝を込めて食事する「精進落とし」も高かった。
「親族を数名呼ぶため昼食を兼ねることにしましたが、懐石弁当は3種類あって真ん中のもので1人7700円。当日、弁当を開けて思いましたが、駅前で買えば3000円程度のお弁当でした。しかも配膳人の人件費として1万3200円取られました。お弁当を並べ、飲み物を運ぶためだけにです」(女性)
葬儀でお坊さんにお経を読んで貰うお布施代は別だ。
女性の実家の墓は地方にあり、近隣に菩提寺がなかったため、葬儀会社がお寺の住職を紹介してくれた。お布施は「当日、ご住職に現金で渡してください」と言われた。
お布施代は15万円。加えて、お寺から葬儀場までタクシーで来ても3000円かからないのに「お車代」が1万円。葬儀は午前中の1時間で終わるのに、「お膳料」が5000円で計16万5000円。
「法名(戒名)は10万円」と言われたが、初対面の住職による命名に違和感を覚えて断ったという。
ちなみに当日、式前に住職に挨拶して現金を渡した時、領収書を所望すると「お送りします」と言われた。後日、郵送された領収書には、何のサービスのつもりなのか「39万5000円」と記入されていたという。
「格安」「安心」「充実した内容」
見積もりの説明が延々と続き、料金が次々と上乗せされた末に、正式な見積書が印刷されて渡されたのは3時間後。女性は疲れ切ったという。その日、内金30万円を振り込んだ。
葬儀は出席7名の小さな家族葬だった。しかし葬儀会社が立て替えた火葬料、現金で渡したお布施代などを含め、葬儀費用は約130万円。父親が積み立てた45万円を差し引いて、女性の負担は約85万円に上った。
女性が振り返る。
「父が積み立てた45万円は、葬儀をしないからといって返金されるものではなく、この葬儀会社を選ばざるを得ませんでした。父が加入したのは最上位のコースで、<充実した内容>と強調していましたが、実際は、オプションをつけなければ葬儀が行えません。“安心”を掲げて互助会に入会させてしまえば、葬儀の時に遺族から上乗せ料金を取り放題なんて納得できません」
葬儀会社が公式サイトで“格安”などと謳い、実際は追加料金を取るケースについて、消費者庁は景品表示法に基づく課徴金納付命令を発出できるが、それは近年でも年1件程度。1000件に上る苦情件数を見れば、行政処分は機能していない。
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